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2人の子供と共に豪雪の中を歩くバダムカタン・ツアカンフさん

皆さんはご存じだろうか?日本には車の運転が許されない外国籍住民が1000人ほどいるということを。しかもその人たちの多くは、公共交通機関が乏しく、冬は自転車や徒歩で外出することが困難な豪雪地帯で暮らしているということを。

2018年12月29日、日本有数の豪雪地帯である新潟県南魚沼市の浦佐認定こども園に、モンゴル人のバダムカタン・ツアカンフさん(30)はベビーカーを抱え、4歳の長男と2歳の次男を迎えに来た。園から出てきたバダムカタンさんの手には2つの子ども用布団が。こども園が年末年始に閉まるため、布団を持ち帰らなくてはならない。他の日本人親たちは車に荷物を積み込む中、バダムカタンさんは「うーん。どうやって家まで行こうかな」と考えた。

普段なら次男をベビーカーに入れ、長男と手をつないで家まで帰るが、今日は、布団をベビーカーに入れ、次男と長男に歩いてもらうようお願いした。しかし、次男は抱っこをせがみ、仕方なく、次男を左手に抱え、右手でベビーカーを押し、長男には歩いてもらった。



幸運にもそれまで大量に降っていた雪が一時的におさまった。「これで大雪だったら傘をささなければならないので、タクシーを呼ぶしかありません」とバダムカタンさん。

歩道は雪があり、ベビーカーを押すことができない。長男には歩道を歩かせ、仕方なく、車道をあるく。車が来たら、歩くのを止め、すぐに道の脇に体を寄せ、車が通り過ぎるのを待つ。

バダムカタンさんは2017年8月に同市の国際大学に入学した。日本政府が途上国支援のために使う「ODA」(政府開発援助)の予算で招かれた「研修生」という身分で、生活費から学費まですべて私たちの税金から出ている。ODAの実施機関である国際協力機構(JICA)によると、2017年は計17000人ほどが研修生として来日した。

ほとんどが数週間から数ヶ月程度の短期研修生だが、バダムカタンさんのように大学院へ留学し、1年以上滞在する長期研修生も1000人ほどいる。長期研修生の国籍数は85か国にのぼり、アジア、アフリカなど多岐に渡る。そして、その内の116人が国際大学の学生である。

同大学は大学院大学で、研修生の大部分は20代後半から30代前半で小さい子どもを抱える世代だ。日本より特殊出生率が高い国が多いため、2〜3人の子どもを抱える研修生は多く、国際大学だけでも20人ほどいる。

バダムカタンさんはモンゴルの運転免許証はあるが、JICAが研修生の車の運転を禁じているため、日本で運転はできない。JICAによると、禁止する理由は、研修生の住居と研修施設が近いところにあり、研修生が運転することによって起こりうる事故を防ぐことが第一だという。

バダムカタンさんは夫と子ども2人の4人暮らし。親せきや友人はモンゴルにいるため、子どもの世話を頼める人はいない。夫と子どもたちが来日したのは2017年12月。すぐに夫のモンゴルの免許証を、日本のものに切り替えようとした。しかし、東京のモンゴル大使館から運転免許証の翻訳文などの書類を申請しなくてはならず、すべて揃えるまでに1か月ほどかかった。

書類がすべて揃って、学科試験を予約した。試験日は3週間後で、学科試験に合格すると、今度は実技試験だが、最寄りの試験場は雪で使用できず、さらに受験まで3週間以上かかった。それから車を購入する手続きに入り、2018年4月にようやく車が届いた。

南魚沼市の降雪量は2メートルを超えることもあり、冬は3〜4日間、雪が降り続けることは珍しくない。そのため、過半数の学生が大学の寮に住むなか、バダムカタンさんは、子どもたちの送迎を第一に考え、こども園から一番近い空き物件に入居することにした。

「使わない部屋が一つあって余計な家賃がかかりますけど、冬の送迎を考えたら仕方ありません」と言う。夫は40キロ離れた長岡市で勤務しているため、午後4時半の送迎時間には帰宅できない。

文=黒岩揺光

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