決済アプリはひとつだけ スウェーデンの楽々キャッシュレス生活

スウェーデン国内で、カードが使えない場所はほとんど存在しない(c)Swish

スウェーデンに住んでまもなく3年が経過するが、これまでキャッシュを使ったのはほんの数回だ。キャッシュは一銭も持ち歩かないため、スウェーデンに来てからは財布すら持たなくなった。代わりにiPhoneのケースにデビッドカードが2枚と免許証が入っている。

スウェーデン国内で、カードが使えない場所はほとんど存在しない。役所や税務署など公共機関も含め、金銭のやりとりが発生する場所では必ずと言っていいほどカードが使える。

このキャッシュレス社会を語るにあたって外せないのが、スマホ決済アプリ「Swish」の存在だ。2012年にスウェーデン及び北欧の6つの銀行が開発。現在の国内ユーザーは約670万人で、1000万人の人口のうち半数以上が使用していることになる。


Swishのユーザーはサービス開始以降利用者は増え続けている。出典:https://www.getswish.se/sv-press/statistik/

Swishの使い方は非常に簡単で、アプリを起動し、受取人の携帯番号と金額を入力し、BankID(印鑑のようなもの)で支払いを承認するだけ。所要時間は10秒程度だ。銀行などはもちろん、個人間の金銭のやりとりもこのアプリで行われる。手数料は、24時間土日祝日含めて、いっさいかからない。

例えば同僚や友人と飲み会に行った際には代表者の1名が店と会計を済ませ、彼が他のメンバーに携帯番号を伝え、各々が送金する。また、会社で誰かが退職する際に「〇〇さんが退職することになったので記念品の贈呈を考えています。△△が幹事をやるのでXXXXXX(携帯番号)まで募金をお願いします」と言った具合に使われる。幹事のデスクに届けに行くのは面倒だが、スマホで10秒でできるならそこまで親しくなくてもやる気になる。



利用状況を見てみると、2018年12月は約3000万回もの取引が行われた。670万人いるユーザーは月平均で4.5回ほど利用しているということになる。取引金額は一回の決済で平均約600SEK(≒7800円、※1SEK=13円で計算)となっている。

BankIDとは、銀行等の機関が発行する電子IDで、日本でいう印鑑や実印のようなもの。パーソナルナンバー(日本でいうマイナンバー)とBankIDの組合せで、スウェーデンの公的機関では手続きのほとんどができる。

例えば、確定申告もパーソナルナンバーとBankIDでログインし、承認を得るまで5分程度しかかからない。育児休暇を社会保険庁に申請するときも、やはり同様の手続きで、もはやスウェーデンではパーソナルナンバーとBankIDがなければ生活ができないと言ってもいいだろう。
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文=吉澤智哉

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