ビジネス

2019.01.23

なぜ、宇多田ヒカルは世界でヒットしたのか?m-floから見た「日本と海外の違い」

「PR3.0」に登壇したm-floのVERBALと☆Taku Takahashi


日本と海外のギャップを埋める「PRプラットフォーム」の可能性

本田:ちょっとPRの方向に話を戻していきたいと思います。私は今後、パブリックリレーションズにおいて重要になる考え方のひとつに「PRプラットフォーム」があると思っています。それはウェブサイトかもしれないですし、何かのイベントかもしれないですが、要はコンテンツベースで発信者と受信者の間に入るという発想です。

私は20年くらいグローバルPR会社グループにおりますが、日本企業や日本ブランドの海外に向けた情報発信の手伝いをする中で感じた最も大きな課題が、「コミュニケーションのギャップ」でした。

例えば、発信者が日本企業で、受信者が海外の方だったとします。日本企業側は開発の思いや商品の特性、熱意などを伝えたいけれど、海外には海外の価値観や文化的背景、国の発展度合いなど、さまざまなコンテクストがある。それを意識せずに情報を発信してしまうと、コミュニケーションのギャップが生じてしまう。

そのギャップを解消する方法として、コンテンツを受け皿にすることで、発信者のコンテクスト、パッションが変換されて受信者に伝わっていくのではないか。また、受信者が持っているコンテクストやパッションを受け皿にすることもできる。

文化的背景、さまざまなコンテクストが異なる海外とのパブリックリレーションズにおいて、PRプラットフォームが重要な役割を担うんじゃないか、と思っているんです。このPRプラットフォームについて話をしていきたく、Takuさんがいま取り組まれているプロジェクトのことを教えていただけないでしょうか?



☆Taku:これは新しく立ち上げた、日本のコンテンツをアメリカなど英語圏の人たちに発信する「OTAQUEST」というウェブサイトです。ウェブサイトですが、このプロジェクトは単純にウェブメディアを立ち上げることが目的ではなく、日本の音楽、アート、ファッション、アニメ、フードなど、アメリカで戦える日本のコンテンツをひとつにまとめたコンベンションにしていきたい、という試みです。

もともと、15年ぐらい前にVERBALが「もっとm-floで海外行こうよ」と言ってきて、僕が「え、ちょっと無理なんじゃないの?」みたいな話をしていたところからスタートしていて。

VERBAL:m-floの今後について話している時に、海外ではいろんなグループの人たちが当たり前に他のアーティストとコラボレーションしたり、フィーチャリングしたりしてて。当時の日本にはあまりフィーチャリングの文化がなく、「これだ!」と思ったんです。

それ以降、僕たちは毎回ボーカリストを迎えて、m-flo loves 安室奈美恵さん、m-flo loves 和田アキ子さんみたいなフィーチャリングをやっています。そういう意味で、僕たちは海外から常にヒントをもらっていて、海外に行きたい夢は常に持ってました。

☆Taku:どちらかと言えば、僕は海外のものを日本にどうやって持ってくるかを考えていたのですが、シカゴで開催されたアニメコンベンションでDJをやったときに考え方が大きく変わったんです。


m-floの☆Taku Takahashi

そのアニメコンベンションは日本でいう「ニコニコ超会議」「コミックマーケット」みたいなもので、大体3〜4万人くらいの人が参加していました。夜に開催される「レイブパーティー」というDJパーティーにDJとして呼ばれて、最初は何をかけたらいいのか分からなかったのですが、「いつもどおりやればいいんだよ」と言われて。

それでいつもどおり渋谷のクラブでかけるような曲をかけたり、自分が手がけたアニメのサントラ、ダンスミュージックをかけたりしたら、お客さんがすごい盛り上がってくれたんです。

その経験が衝撃的で。アニメコンベンションに興味を持つようになり、いろいろ調べてみたら、シカゴだけではなく、ロサンゼルス、テキサスなど小規模のものも含めたら、週に1回のペースでアニメコンベンションが開催されている。

本田:週に1回ですか?

☆Taku:そうなんです。シカゴは約3〜4万人、テキサスは約4万人、他にも東海岸の地区で約5万人、ロサンゼルスは10〜12万人の人がアニメコンベンションに参加するんです。

本田:合計したら、すごい規模になりますね。
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文=新國翔大 写真=PR Table提供

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