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最後の仕上げは職人たちの繊細な作業

髙山は手仕事での経験を生かして生産工程を切り分け、大幅な機械化に成功した。これにより約20倍の大量生産が可能となり、年商は5億円に成長。海外売り上げは全体の3割を占め、30名に増えた社員の平均年齢は27歳に若返った。

「もちろん最後の仕上げは職人技が必要ですが、職人が一人前になるまでの期間は約2年に短縮できました。いつかは海外で戦うつもりでしたから、工作機械はドイツやスイスまで買いに行きました」

髙山は培った切削加工技術を生かし、取り扱う製品の幅も広げた。いまではチタン製の脊髄インプラントや超音波アスピレーターなど、世界のマーケットに向けたハイエンド製品も製造し始めている。

「私の手術が変わった」

そんな同社を代表する製品が、なぎなた型の刃を持つ手術用ハサミ「上山式マイクロ剪刀ムラマサスペシャル」だ。

「これは『匠の手を持つ』と称される脳神経外科医・上山博康先生と共同開発したものです。私自身も医学書を読んで知識を深め、手術に立ち会いながら開発しました。日本の脳神経外科手術の現場では約9割のシェアを占めています」

脳神経外科の手術は顕微鏡下で行われ、医師は細い血管と格闘する。高い集中力を必要とする「匠」が使用する道具は人の生命をも左右する。滑らないピンセットも手術の立ち合いで生まれた。髙山が医師たちと開発した「負担を減らして命を救う道具」は70種類を超えた。



特筆すべきは、髙山が海外展開を始めた時期が2016年の4月だということだ。そこからわずか2年半で、髙山は世界35カ国にまで販売代理店を広げている。

「UCSFのマイケル・ロートン医師(現BARROW NEUROLOGICAL INSTITUTEチェアマン)など、世界の高名な先生たちに声をかけて『うちの手術機械セットを使ってください』とお願いしたんです。ハーバード大学や(連合会)EANSヨーロッパ脳神経外科学会が主催するトレーニングコースのスポンサーにもなって手術機械セットを貸し出しました。まずは購入決済権を持つ先生に使ってもらうためです」

名医ほど道具の質は落とせない。日本の高い技術力と世界の名医とのパートナーシップが生み出した医療機械の評判は、瞬く間に世界中の医師に広がった。

「君の道具で私の手術が変わり、手術時間も短くなった。君は僕のパートナーだ」

いまでは世界中から、髙山のもとにそんな感謝の言葉が届く。30年前に抱いた髙山の夢は、ついに現実となった。


髙山隆志◎1965年、東京生まれ。高山医療機械製作所 代表取締役社長。18歳から先代のもとで手仕事を学ぶ。機械化を進め、世界進出を実現。年間100日は海外を飛び回る。

文=畠山理仁 写真=吉澤健太

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