「もう一人のスティーブ」が語る、アップルとジョブズへの素直な思い

スティーブ・ウォズニアック


藤井:あなたは2度、アップルを離れていますよね。

ウォズニアック:はい。でも、実はいまでも毎月給与をもらっている唯一の人物ですよ。まず1度目は、Apple Ⅱが発売して10年後くらいでした。

その後、シニアエンジニアとして、コンピューターデザインを担当しした。たくさんの良いアイデアを出して、いくつかの製品を開発しました。ですが、その後また会社を去りました。しかし、本当にクビになっていないんです。いまだにお給料は出ています。

「革新」とはライフスタイルを変えること

那珂:アップルはとても大きな会社になりました。一方で、ジョブズが亡くなってからはクリエイティブがなくなったと言われることもあります。

ウォズニアック:そんなことはないでしょう。ティム・クックがいますよ。

しかし、そもそも革新とは何なのでしょうか? 私にとって本当の革新とは、人生の中で起こることです。

2007年には社名を「アップルコンピュータ」から「アップル」に変え、この会社はライフスタイルの会社になりました。飛行機やレストランの予約、車の手配などiPhoneのアプルでたくさんのことをできるようになりました。私は30以上のアプリを使っています。

アップルが生み出した発明に、touch IDや指紋認証があります。ライフスタイルを変えているのはこういうものです。指紋の利用は革新的なことです。

例えば、Apple pay。決済だけならAndroidでもできますが、アンロックコードを入力して、アプリケーションを見つけて、クレジットカードを選択して、ピンナンバーを入れてタップして決済……というのはあまりに面倒です。iPhoneのホーム画面を開かなくても、指で本人認証するだけですぐに決済できる。こういうものを革新というのではないでしょうか。



藤井:最後に日本の若者、あるいは起業家にアドバイスをお願いします。日本が革新的になるためには、どうすればいいでしょうか。

ウォズニアック:デジタル技術は昔に比べて世界に広がり、かなり安定化しました。これからの問題は、それをどうやってプロダクトに落とし込むかでしょうね。

若い人にアドバイスしたいのは、自分の好きな道に進んでほしいということです。特に高校生や大学生はルールばかりに従わず、クリエイティブになってください。新しい映画をつくるとかね。それはきっと、世界を変革する種になります。

そして、そのために大切なのは正直であること。例えば、自分のアイデアと他人のアイデアを比較できれば、より良いものがつくれます。自分のアイデアがベストなら、スタートアップを立ち上げてもいいかもしれません。それはきっと1人ではできない。でも、3人いれば可能かもしれません。

起業する人にアドバイスするとすれば……ビジネスセンスは大事ですね。必ず数字をみてください。どんなものが使いやすく、どんなものが使いにくいか……。例えば、僕は日本の商品はボタンが多すぎて複雑だと思っていました。自分自身が使いたいものをつくってください。私にとってのコンピュータがまさにそれです。

ジョブズもそう。彼はシンプルなものをつくったのは、自分のライフスタイルに必要だったからです。これがベストマーケティングです。

あとは、優秀なエンジニアをチームに入れてください。学者ではなくものをつくれる人、つくることが好きでたまらない人です。そういう人が、既存の常識を排除してくれますから。

構成=野口直希 撮影=嶺竜一

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