多くの委員(議員)は、自分の主張に終始し、だから自分が正論であり、証人は間違っているというスタイルだが、多くの場合、論点のすれ違いで終わって噛み合わない。しかし、ハリス上院議員の場合は、検事流なので違いが目立つ。法廷での検事の仕事は、被告人の罪を立証することと、弁護人の連れてくる証人を弾劾して証拠能力を貶める、この2つしかない。彼女は弾劾のプロなのだ。
従って、彼女は自分の主張は冒頭にまとめて言ったら、あとは相手の発言の矛盾を探すことに徹底している。彼女は頻繁に、過去の公聴会などで証人が言った発言を手元にもち、それを読み上げ、今の発言とのわずかの矛盾を逃さず、それをマイクに向かって声高に主張して、「あのときが嘘なのか、今が嘘なのか!」と気色ばんで攻める。
そこで、相手が事情の複雑性を訴え、そんな簡単な問題ではないと述べ始めると、相手をただちに遮り、「イエスかノーか!」と迫る。
さらには、証人の責任が大きなことをおだやかに確認した後で、では、「それを知っているか」「あれを知っていたのか」と攻めに転じる。
日本の国会のように、質問の事前通告があるわけではないので、多くの場合、証人は記憶で答えねばならないシーンがあり、そこをハリスは突っ込む。「あなたは長官なのに、そんなことも知らないのか!」「そんなことを聞いているんじゃないの!」と強い言葉が続く。
ザッカーバーグも顔色を失った
去年、フェイスブックが個人情報保護違反の疑義で、マーク・ザッカーバーグCEOが公聴会に出たときにも、ハリス上院議員は質問に立っていた。
無難にこなし、株価を戻したザッカーバーグだったが、あのとき、唯一、彼が答えに窮して押し黙り、顔色を失ったのは彼女の質問だった。彼女は彼を厳しく責めるときには決して手元のメモに目を落とさず、相手の目をぐっと睨みこんで絶対に視線をそらさなかった。
このようにハリス上院議員は相手と相手の言説を弾劾する、プロ中のプロであり、まさに民主党にとってトランプの癇癪玉にぶつける相手としては最適なのである。さらに選挙経験も長いので、カメラの前で自分がどう映るかについてもとてもよく意識している。