全米に広がる公立校のストライキ、最大の被害者は貧困層の生徒たち

1月14日に、ロサンゼルスで行われたストライキ(Photo by Barbara Davidson/Getty Images)


確かに、この公立学校区では、生徒の7割が数学で、6割が英語で落第点をとっている。12%が高校を中退し、大学卒業までたどり着けるのは1割ちょっとと、全米で見ても問題のある教育環境にあることは間違いない。

そういうことであれば、ますますストライキをしている暇などないのだ。前出のビュトナー総裁によれば、60万人の生徒のなんと8割は、無料もしくは割引が適用された学校給食に栄養価を依存している、という。

USA TODAY紙の取材にある教師は、「たくさんの子供にとって、確実に食べられる食事は給食だけ。毎朝、昨日はディナー食べたかと訊くと、多くの子供がノーと言う」という現状を伝えている。

このストライキは、こうして、抗議しても裁量のない相手に向かって拳を振り上げ、貧困家庭の生徒の食事を奪っている。彼らがようやく食べられているのは、生徒の親たちが臨時の寄付をして、食事を買い与えているからだという。

またウォール・ストリート・ジャーナルによれば、このストライキを決行している教員の平均給与は約750万円だという。それはカリフォルニア州の他の地域と比べると60万円低いらしいが、福利厚生は抜群で、それらを合わせると1100万円相当の給与になるという。

なにかと物価高のロサンゼルスにあって、お金はいくらでも欲しいのは人情だろう。しかし、ここはシリコンバレーやマンハッタンではない。

ロサンゼルスの夫婦合わせての年間収入が平均540万円(データUSA)という中で、1100万円相当の給料をもらいながら、生徒の授業をせずに、自分たちの給与を上げるためのストライキをして、そして「子供たちのためのストライキ」とスローガンを掲げる。

これがおかしいと思うのは、果たして筆者だけであろうか。そういうの、やめませんか。

連載 : ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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