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2019.01.21

評価経済アプリ「VALU」が5億円調達 騒動を経て彼らが目指す「信用」が価値になる世界

(c)VALU

「信用経済(評価経済)」という言葉が日本広く知られるきっかけになった「VALU」から、久々に大きなニュースが入ってきた。

VALUは1月21日、グローバル・ブレインから5億円を調達したと発表した。併せて、グローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏がVALUの社外取締役に就任する。

また、同日にはAndroidアプリのリリースも発表。春までにはSNS機能の追加拡張と優待機能の改善、夏までには取引機能の刷新など、今後もアップデート・事業拡大を目指すという。

「信用」をめぐる社会と制度のギャップを埋める

VALUは、個人の信用をトークン(VA)として発行できるサービス。売りに出されたVAは株式のように人気に応じて価格が変動し、取引は全てビットコインで行われる。

サービスリリース直後から堀江貴文などのインフルエンサーが大きく話題にしたことや、ユーチューバーのヒカルらがVALU内で今後の活動を匂わせる発言をして注目を集め、価格が高騰したタイミングでVAをすべて売却。株式市場でいうところの「価格操作」事件(法的な問題には問われなかった)として批判されたことを覚えている人も多いだろう。

以前インタビューで代表の小川晃平が話しているように、VALUが目指しているのはお金や社会的地位以外の様々な「信用」を有効活用できる仕組みをつくることだ。

小川の考えでは、信用を可視化した社会はすでに実現している。例えば、飲食店の評価を数値化した食べログなどがその筆頭だ。

にも関わらず、賃貸やクレジットカードの契約などの制度面では、所属企業や年収といった一部の指標しか参照されないことが多い。こうした社会と制度面での乖離を埋めて、これまで経済市場で扱われることのなかった個性を資産にできるようにしたいという。

一時期はインフルエンサーの利用ばかりが注目されたVALUだが、騒動の後はボーカロイドのプロデューサーやペイントアーティストなど様々な人が利用。ユーザー同士がつながるきっかけにもなっている。

ヒカル事件の後は法整備などを参照しながら調整に奔走。iOSアプリをリリースするなど、着実に足場を固めてきた。現在はWeb版・iOS版を併せて約10万人が利用し、累計支援金額は10億円を超えている。今回、さらにプラットフォームの規模を広げるべく、Androidアプリのリリースを開始した。



VALUはこれまで、クリエイティブエージェンシーのPARTYや個人投資家の千葉功太郎、堀江貴文などから出資を受けている。今回5億円の出資を発表したグローバル・ブレインはメルカリやBASEなどにも出資している独立系VC。代表取締役の百合本安彦がVALUの社外取締役に就任し、密接な経営支援に取り組む姿勢だ。

今回の出資について百合本は、以下のようにコメントした。

「VALUはテクノロジーの力を活用し、夢や目標の実現を目指す人たちが継続的な支援者を募る仕組みづくりに取り組んでいます。クリエイターやアーティストなどの個人と、長期的な応援者を繋ぐプラットフォームは、従来の資金調達の在り方を変える画期的なものであり、事業としての成長余地も非常に大きいと考えています。グローバル・ブレインは、当社の作り出す新しい資本経済の形の実現に向け、多面的な支援をしてまいります」

信用スコアを扱ったサービスとしては中国の「芝麻(ジーマ)信用」が有名だが、国内でもソフトバンクとみずほ銀行が個人データをもとにAIで融資の金利・極度額を算出する「J.Score」や、LINEが2019年上半期中に開始を予定している、メッセージアプリ上で収集した情報をもとに個人向けローンの利用可否などを判断する「LINE Score」などがある。

個人の「信用」に注目が集まる一方で、現状では多くのサービスが融資判断などの限られた領域に信用スコアを用いている。個人の信用をより直接的な形で扱うVALUが市場にどう評価されるかは、まさしく「信用経済」の今後を占う大きな指標になりそうだ。

文=野口直希

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