AIは非喫煙者の味方か、喫煙を取り締まる用途が続々登場

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喫煙が身体に害を及ぼすという研究事例は多数存在するが、今回、機械学習を使った新たな研究結果が報告された。

米国の人工知能(AI)企業、Insilico MedicineのPolina Firsanova博士研究チームは、機械学習を使って、喫煙者・非喫煙者(成人14万9000人対象)の実年齢および健康年齢の乖離を調査した最新結果を、英国の科学専門誌「Scientific Reports」に公開した。

研究チームは、調査対象を年齢、性別、居住地域に分類し、血糖値、空腹時血糖値、鉄分、尿から排出される老廃物など各データを機械学習技術で分析。結果、30歳以下の喫煙者の半分以上が、健康年齢31~50歳と実年齢を上回ったと報告している。一方、非喫煙者の62%が実年齢と健康年齢が一致しているとの見解も併せて発表した。

喫煙が引き起こす問題を人工知能で解決しようという試みは、健康年齢の研究調査以外にもある。昨年10月には、マイクロソフトとガソリンスタンド大手シェルが協力し、スタンド内で喫煙している人を発見するAIソリューションを発表している。

またSoter Technologiesが開発した人工知能と連動したセンシング装置「フライセンス」は、校内における学生の喫煙を防ぐ用途で利用され始めている。またスマートカー分野でも、居眠り運転などに加え、車内での喫煙を判断するAIシステムの開発が着々と進められている。

そのような動向を見る限り、最新テックである人工知能は喫煙者の“排除”を促進する方向で利活用されていくのだろう。もちろん、法律やマナー違反は問題外だ。しかしながら、正直、喫煙者である筆者としては、「喫煙者のためにもAIを利活用して欲しい」と思わなくもない。

例えば、喫煙者でも健康を維持できる方法の研究(そのようなものがあるかは分からないが)にAIが用いられるとか、もはや壊滅していくであろう貴重な喫煙スペースをレコメンドしてくれるAIアシスタントなどがあったら便利だと思う。

いずれにせよ、人工知能に世の中の感覚を反映し作業を代替・効率化するという本質的特徴があるのだとすれば、“喫煙は悪”という社会的コンセンサスを拡大するのにも一役買っていくことだけは間違いない。「AIによって喫煙者の身はさらに狭くなった」。そう評価される時代が間もなく訪れそうである。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河鐘基

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