ビジネス

2019.01.21

1年間、全社員でブランドを考え抜いた。誰一人、辞めない会社になった

「いやいや、まだ、早いやろ」

2017年7月、akippa大阪本社。マーケティング責任者である横田学から社長である金谷元気の元に「サービスのブランドプロポジションを定義しましょう」と提案があった。その時の率直な感想が前述のそれである。このブランドプロポジションとは、「ブランド固有の特徴を、ブランドとユーザー両方の立場から定義したもの」で、ブランドの基礎となるものである。

akippaは駐車場のシェアリングエコノミーサービスを展開する関西を代表するスタートアップの一つだ。累計で約24億円という資金を外部から調達するなど、市場からの期待が極めて大きい。

投資家からの期待は当然、事業のスケール。ブランドのこととなると、一般的には「早い」と判断されるだろう。ただ、金谷は横田からの提案を何度か受けていく中で、徐々に「今こそやるべきだ」という心境に変わっていったという。

そこから、“全社員”によるakippaのブランドを定義する約1年という長く険しい航海がはじまった。そして航海が終わった時、クルー全員の姿がそこにあった。

iPhoneもユニクロも、いいサービスは使う理由がすぐ言える

まだ早い、とブランド定義の提案を流した金谷だったが、ブランドについて考え始めるとある共通点に気づくことになる。

自分がよく使ってるサービス、商品、全てブランディングがきちんとされている、と。

「アップルもそうユニクロもそう、ネットフリックスもそう、自分が普段使いしているものって、きちんとその魅力が定義されている。つまりユーザーである僕自身もその魅力をプレゼンできるわけで。この時、いいブランドって、ちゃんとユーザーにコミュニケーションしている、ブランドの魅力や社会的存在意義を提示できているということに気づいたのです」(金谷)


プロジェクトに金谷自身も積極的に参加。社内へ本気度を示した

仮にここでブランドプロポジションを定義をしないまま、社長である金谷はもちろん、全社員が異なった認識でブランドを広めてしまうのは長期的に考えるとリスクでしかない。事業も軌道に乗り、PMF(プロダクトマーケットフィット)が起こりはじめた中で、ユーザーと丁寧にコミュニケーションしなければ、人が人を呼ぶサービスにはならない。つまりはパーキングで世界一のサービスは創れないと金谷は焦ったのだ。

そして金谷はこのプロジェクトにGoサインを出す。約1年に及ぶ、ブランディングプロジェクトがスタートした。
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文=後藤亮輔

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