ビジネス

2019.01.21

1年間、全社員でブランドを考え抜いた。誰一人、辞めない会社になった


予定調和ではない、痛みの伴うヒアリングから始まった

ブランドプロポジションを定義するためにまず、役員・マネージャー陣はもちろん社員へのインタビューが実施された。「今のサービスについて率直にどう思うか?」「akippaのサービスの優位性は何か」「致命的な欠点はどこか」「サービスを誇れるか否か」など、忌憚のない意見が寄せられる質問設計だった。もちろん、予定調和ではない。

プロジェクトチームは上がってきた意見すべてに目を通し、サービスの長所と短所をマッピングし、カテゴライズしていった。社員の正直すぎる声に初めて触れた金谷は、こんなことを思ったという。

「辛辣すぎてこたえました、とか言った方が面白いかもしれませんが、全然そんなことはありません(笑)。僕自身が持っていた課題ともマッチしていて、予想通りだなと。むしろ、全員の意見がまとまっていたことに関しては、喜びをおぼえましたね」(金谷)


声にするのが苦手な社員も積極的に文字で意見。議論は活性化した。

いくつか例をあげてみよう。「会社、サービスをこれからどうしたいか」という設問においては、「世界のakippaになるべき」や同時に「人に愛されるものにしたい」という方向でまとまっていた。ネガティブな意見もそれなりに出てきたのだが、それぞれ読み解けば要素は見事に被っていたという。つまりは皆が同じ未来を見つめ、同じ課題認識を持っていたのだ。

ここからは極めてシンプル。サービスにおけるネガティブ要素を排除し、ポジティブな要素からブランドプロポジションの策定へと移っていった。

そして生まれたのが、「PARK UP. anytime anywhere.」というブランドプロポジション。

「anytime anywhere」という駐車場の予約サービスならではの機能的ベネフィットに加え、「PARK UP」という人を元気にする、活力を与えるフレーズでakippaらしさを伝える。まさにakippaのサービスを表現するにふさわしいブランドプロポジションが完成した。


世界観が明確になることで、営業、そして広報のクリエイティブへの意識が向上


2018年4月25日に出した「ブランドの再定義、サービスロゴ刷新」のプレスリリースは、この類では異例とも言える、500強のフェイスブックシェアを記録した。

ブランドを社員全員で考えた1年、誰も会社を辞めなかった

ブランドプロポジションを定義し、サービスロゴを刷新した過程をこれまで紹介した。ブランドを定義するということは、一般的に対外的なもの、消費者やクライアントに向けたものとされている。

ただ、akippaの場合、ブランドプロポジションの定義によってまず、“社内”に化学変化が起こったのだ。しかも劇的な。最後に金谷社長へのインタビューでその全容を明らかにしていこう。
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文=後藤亮輔

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