ビジネス

2019.01.21

ホームランしか狙わない「次のユニコーン」

和田圭祐(左)名越達彦(右)

名越達彦が2012年12月に設立したパネイルは、電力会社、新電力向けの次世代型エネルギー流通基幹システム「Panair Cloud」を提供し、また自らも新電力事業を手がけている。18年4月には東京電力ホールディングス傘下の東京電力エナジーパートナーと共同出資で電力・ガス販売を行う「PinT」を設立した。
 
和田圭祐がゼネラルパートナーを務めるインキュベイトファンドは16年6月、同社への投資を実行し、支援をしている。


和田:私がはじめてパネイルのことを知ったのは16年の「B DashCamp」でのプレゼンテーションを聞いた時です。エネルギー業界という大きな市場に真正面から論理的にアプローチをしている印象を受けました。ただ、その会場では、直接話をする機会がなく、面会希望のメールをしてお会いしたのがきっかけです。

名越:1年かけて様々なVCと話をしたのですが、「誰もやったことがない」「レガシーな業界で簡単にいかない」とネガティブな反応がほとんど。未知の可能性にかけようという気概を持っている投資家は和田さんがはじめてでした。

我々は渾身の力で振り抜いてホームランを狙いにいくスタイルなので、そこを真正面から受け止めて「いいね」と応援してくれる稀有な存在です。

和田:私は投資方針として、なるべく大きなチャレンジに資本と時間を使いたいと考えています。そういう意味ではより野心的な方がありがたい。パネイルの場合は、経営の困難や苦労、試練を乗り越えてきた、大胆かつ、実行力のある、非常にタフな経営チームでもありましたから。

名越:投資いただいてから2年半を振り返ると、PinTを設立できたのは、間違いなく和田さんのご尽力のおかげ。

インキュベイトファンドのLPである産業革新機構から東京電力を紹介いただき、そこで話をした際に「素晴らしい」と評価いただき、トントン拍子で話が進んでいきました。和田さんがパネイルを発展させるために持てるネットワークを手繰り寄せてくれ、まさにわらしべ長者のようでした。

和田:印象的だったのは、新電力業界が一番警戒しているリスクであるスパイク(電力価格の乱高下)が起きた際に、右往左往するのではなく、次の事業機会を探して、ただでは転ばずに成長戦略をさらにブラッシュアップすることを繰り返してきた点。

大きくリスクをとって成長を狙うオフェンス面と、次に備えるべきリスクや危機に対して先手を打っていくディフェンス面について、事業面、組織面で両方高いレベルで伸ばしていく総合力やバランス感覚を持っている経営者であり経営チームだと思います。
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文=山本智之 写真=平岩 享

この記事は 「Forbes JAPAN 日本の起業家」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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