時空を超える「食」とお土産のチカラ

福岡を代表するお土産たち(筆者撮影)


そのとき、2つの発見がありました。ひとつは、スペインでも明太子の味がわかってもらえるんだなということ。もう一つは、地元の家族や友達は元気にしてるかな、と思いを馳せたことでした。

食は生きるための栄養ですが、心を養うための栄養としての役割もあります。気候風土の中から生まれた土地の産物が、心身ともに、どれだけ影響があるのかをふっと考える機会になったのを今でも覚えています。

フランスに来て20年以上が経ち、「ホームシックになったことはないのですか?」と言われることも多いのですが、そう聞かれて思い出すのは、福岡から東京に出てきた学生時代に、母が定期的に送ってくれていたダンボールのことです。

その中身は、幼少時代に食べた九州名物の「うまかっちゃん」というインスタントラーメンでしたが、これが一人暮らしの身には染みる味で、まだまだ福岡には帰れない、頑張らなきゃという気持ちにさせてくれたのです。また原宿の「じゃんがらラーメン」も、懐かしい故郷の味として勇気を育んでくれたので、ホームシックになることはありませんでした。

僕は、食には、時空を超える力があると思っています。思い出を育み、それを再び食べたときに、勇気づけたり、温かい気持ちにさせてくれる。そしてお土産には、そんな力があるなと考えています。

旅の楽しかった思い出を、自分の記憶のため、または家族や友人に共有するためにお土産を買う。もしかしたら、そのお土産がきっかけで、その土地に行きたくなる人もいるかもしれません。そのためにはやはり、日本全国、世界各地どこにでもあるものでなく、その土地らしさが大切です。

観光業は、「他の産業のPR」であると言われます。その土地にどんな食があり、どんなモノが作られ、どんな生活があるのかを紹介する。その観光の大きな要素であるお土産において、業界などの枠を超えた共創が増えれば、もっとユニーク競争力のある商品が生まれるのではないかと思います。

連載:喰い改めよ!!
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文=松嶋啓介

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