小型衛星で米アラスカ州を「ブロードバンド化」するAstranisの挑戦

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宇宙空間に打ち上げた小型衛星で、低コストのブロードバンド接続の提供を目指す衛星スタートアップ「Astranis」が1月16日、米アラスカ州の通信プロバイダー企業Pacific Dataportと独占契約を締結したとアナウンスした。

今回の契約で、Astranisは2020年に小型衛星を打ち上げ、アラスカ地域に7.5ギガbpsのインターネットの通信環境を提供しようとしている。Pacific Dataportはその帯域の一部を用いてビジネスを行い、家庭向けのインターネットサービス事業のMicrocomなどを展開する。

アラスカでは人口の約20%の人々しかブロードバンドにアクセスできておらず、今回の衛星は地元の人々のネットの利便性を大きく向上させることになる。米国の過疎地域では、多くの人がブロードバンドにアクセスできないことが課題となっており、地理的要因から従来のファイバーケーブルの敷設が困難なアラスカは、特にこの問題に苦しんでいる。

AstranisのCEOのJohn Gedmarkは同社の公式ブログで「Pacific Dataport創業者のChuck Schumannは、アラスカの人々のインターネットへのアクセスを、大きく向上させるという情熱を抱いている」と述べた。

Astranisによると今回の受注額は数千万ドル規模であり、詳細は非公開ではあるが、一定の指標を達成できればレベニューシェアを受け取れるという。

Astranisは衛星スタートアップ企業として、急速な発展を遂げている。2015年創業の同社は、2018年1月に最初の衛星を打ち上げ、同年3月には1350万ドル(約14億円)のシリーズA資金をアンドリーセン・ホロウィッツの主導で調達していた。AstranisにとってPacific Dataportは、第1社目の企業顧客になるが、他にも複数のクライアントと話し合いを進めているという。

衛星インターネット分野ではこれまで大手企業が、数億ドル規模の予算を投じ、大型の人工衛星を打ち上げてきた。一方で、スペースXや英ヴァージン・グループが支援するOneWebらは、低軌道に数百もの小型衛星を送り込むプロジェクトを進めている。

そんな中、Astranisはワインクーラーほどの大きさの小型衛星で、スペースXやOneWebに対抗しようとしている。また、衛星を低軌道ではなく静止軌道に送り込むことで、1基の衛星で広域にサービスを提供することを目指している。Astranisによると、この方法のほうがコスト的メリットも大きく、巨大な成長が見込める衛星インターネット市場で有利に戦えるという。

モルガンスタンレーの試算によると、衛星インターネットの提供事業者らは、2040年までに5000億ドル以上の売上を生む可能性があるという。

編集=上田裕資

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