対照的に、現在のアップルのアプローチを象徴するのが、メッセージサービスのiMessageだ。現状ではこのサービスを利用するためには、iOSかmacOSのMessageアプリを用いるしかない。
ユーザーをアップル製品で囲い込む戦略は、短期的な利益にはつながるだろう。しかし、このアプローチで長期的に成功を収めることは不可能だ。アップルが、真剣にサービス部門の売上拡大を狙うのであれば、クロスプラットフォーム化は必須のこととなる。
中国の場合は、スマートフォンのメッセージ機能はテンセントのWeChatにほぼ独占されており、アップルが中国のメッセージ市場に食い込むことは不可能だ。一方で西側諸国では多様なアプリが利用可能だが、市場の覇権を握るのはフェイスブックのMessengerやワッツアップといった、クロスプラットフォーム対応のアプリとなっている。
ティム・クックが、真剣にサービス分野の勝負に打って出たいなら、全ての顧客を呼び込み、可能な限りのシェアを獲得するための戦略を練るべきだ。囲い込みの時代は終わりを告げ、世界全体の消費ボリュームの奪い合いが始まっている。新しいゲームが中盤まで進んでいるなかで、アップルはまだスタート地点にも立てないでいる。