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2019.01.21

「囲い込み」では勝てない、アップル絶不調から見えてきた事実

ティム・クック(Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

アップルがこの先も繁栄を望むのであれば、ティム・クックCEOは一刻も早く自社製ハードウェアでユーザーを囲い込むことをやめ、全サービスのオープン化を進めるべきだ。

アップルは先日、投資家に向けて今後の売上減少に関する警告を発し、ティム・クックは今後、ソフトウェアやサービス部門を増強すると宣言した。しかし、彼が本当に投資家の期待に応えたいのであれば、アップル製品でなければアップルのサービスを受けられないというアプローチを改める必要がある。

音楽関連のサービスでいうと、Apple MusicはもはやiOS限定のサービスではなくなっている。Google Playのデータを確認してみると、アンドロイド端末向けのApple Musicアプリのダウンロード数は既に1000万件を突破しており、アップルは全てのスマホユーザーをターゲットにApple Musicを運営中だ。

アップルが音楽関連のサービスをクロスプラットフォーム化したのは、これが初めてではない。2001年に初代iPodが登場した時、iTunesはMac限定で利用できるアプリケーションであり、iPodオーナーであることはMacオーナーであることを意味した。21世紀が始まったばかりのその頃、MacユーザーはPC市場のマイノリティだった。

iPodの普及が始まったのは、2003年10月にiTunesがWindows対応を果たして以降だ。そのタイミングでiPodは「Macユーザー専用のガジェット」という状態を脱し、21世紀を代表するコンシューマー向け電子デバイスとしての地位を確立した。

サービスをオープン化することにより、アップルはiTunesに多くの顧客を呼び込み、それが後のiPod Shuffleなどのハードウェアの売上増につながった。2005年に発売されたiPod Shuffleは時代の転換点を象徴するデバイスだ。誰でも簡単に操作できるデスクトップアプリと連携させて使用する、マス向けの求めやすい価格のMP3プレイヤーは、人々の音楽の楽しみ方を根底から変えた。

短期的にみればiPod Shuffleがアップルにもたらした利益はそれほど多くはない。しかし、iTunesをオープン化したことによりアップルは多くの顧客を彼らの庭に呼び込むことに成功し、その後の長期的成長のきっかけを作った。
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編集=上田裕資

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