英国はEUから離脱すれば、双方が使用している「国内消費税対象品管理システム(EMCS)」へのアクセスも失うことになる。そうなれば、国境での通関手続きにはより多額のコストがかかることになる。
そして、スコッチウイスキー業界にはすでに、こうしたことが実際に起きる可能性の影響が出始めている。オールドプルトニーやバルブレアなどの蒸留所を保有するインバーハウスのマーティン・レナード社長は、地元メディア「ヘラルド・スコットランド」の取材に対し、合意なき離脱の可能性により、同社の蒸留所は生産スケジュールの変更を余儀なくされていると訴えた。
新たな生産分を3月29日の離脱期限までに出荷しようと急いでおり、生産・物流のいずれにおいても、問題が起きる可能性が高まっているという。さらに、こうした対応を取っているのは同社だけではない。
最大の不満は「政治」
スコッチウイスキー業界は自らが今後に向けてどのような計画を立てる必要があるのかについて、適切に説明することができない政府にいら立っている。
ベンリアック蒸留所のかつての社長で、現在は同じスペイサイド地域にあるグレンアラヒー蒸留所のオーナーの1人であるビリー・ウォーカーは、ブレグジットを巡る現状は「腹立たしい」として、ヘラルドに次のように語った。
「テレビを見ていると、どの政治家も“もっと良い合意条件を引き出すことができるはずだ”と言っている。だが、彼らはそれがどのような条件なのかを明らかにせず、その条件にどうやって合意を得るかについても発言しない」
「私が懸念するのは、今後もこうしたイデオロギー的な議論が続き、私たちがそもそも目指していたことの実現が妨げられることだ。そんなことはばかげている。世界中がどうかしている」