酒造大手のディアジオやペルノ・リカールなどは、2016年に行われたEU離脱の是非を問う国民投票でEU残留を支持した。そして、スコッチウイスキー業界はその後、常にブレグジットに神経をとがらせてきた。
国民投票後にはポンドが値下がりし、スコッチウイスキーの輸出量や蒸留所を訪れる観光客が増加。短期的には恩恵を受けたものの、同業界としては、将来に関する不確実性が大幅に高まったためだ。
先行きが不安視されるのは、貿易や雇用の保証、EU加盟国であることの特典を失うことだけではない。例えば、「スコッチウイスキー」という名称は現在、「地理的表示保護制度」によって「シャンパン」と同様の保護の対象とされている。だが、離脱後にこれがどうなるかは分からない。
「悪夢」は避けたい
ロビー団体であるスコッチウイスキー協会(SWA)は昨年末、テリーザ・メイ首相とEUがまとめた離脱協定案への支持を表明。合意なき離脱のシナリオは何としても回避するよう求めた。スコッチウイスキー業界にとって、合意なき離脱はどのような意味を持つのだろうか?
EUや米国、カナダを含む数多くの市場にスコッチウイスキーを輸出する際の関税は、世界貿易機関(WTO)の規則に基づきゼロとされている。この点で、同業界に壊滅的な打撃がもたらされることはない。
だが、スコッチウイスキーの生産に必要なコルク栓やガラス瓶、大麦などをEU加盟国から輸入する際には、影響を受けることになる。さらに、EU以外の各国市場へのアクセスについて、離脱後にも現状を維持できるかどうかは不明だ。欧州市場を中心として、サプライチェーンにかかるコストも増加することになるだろう。