中国のイーロン・マスクが仕掛けるEVのコミュニティビジネス

(C) Sami Välikangas


サアリ:電気自動車を走らせるためには、環境を整えないといけません。充電ステーションは中国にどれくらいあるのでしょうか。

リー:2017年末の時点で、公共の充電ステーションは17万箇所ありました。また、各家庭に充電器を設置することはそこまで難しいことではありません。

そのほかに私たちは「ワンクリック」で電池をチャージできるボタンをアプリにも作りました。クリックすれば我々のスタッフがユーザーの代わりに現地まで行ってチャージしにいくサービスです。充電できるトラックも用意しています。充電が足りないと思えば、そのトラックがそばまで行くので、そこでチャージできます。

また、バッテリー交換ステーションも用意しています。ここでは、約3分でバッテリーを交換できます。北京から深圳までの高速道路に18の交換ステーションを設置しました。

サアリ:バッテリー業界はどのようなことが起きているのでしょうか。技術は進歩していると思いますか。

リー:重要なのは、バッテリー技術ではなくバッテリーエクスぺリエンスです。スマホがいい例です。スマホのバッテリーについて心配している人はあまりいませんが、10年前の技術と比べると実はスマホのバッテリーはそこまで進化していません。私たちがなぜ心配していないかというと、充電器があるからです。

私たちは、電気自動車の大量生産のためにバッテリー技術の進化が必要だと思いがちですが、充電ステーション、充電トラック、バッテリー交換ステーションや家庭内バッテリー設備があれば良いユーザーエクスぺリエンスを実現できるでしょう。そうすることで、ユーザーはバッテリーやバッテリー技術の心配をしなくてもよくなります。


(C) Sami Välikangas

サアリ:バッテリー技術が進歩しないことは、電気自動車普及における障壁になりうるのでしょうか。

リー:電気自動車普及のための障壁は、(バッテリー技術の)知識ではありません。障壁は、ユーザーのマインドセット/考え方です。

例えば、全ての家庭にバッテリー充電設備を搭載したとしましょう。誰が今までのガソリンスタンドに行きたいというでしょうか。誰もいないと思います。例えば400kmくらい遠いところに行くとします。その場合は、バッテリー交換ステーションを使えばいいでしょう。私たちのクラウドサービスで、全てのユーザーのスマホ、車、ステーションが繋がっていたらユーザーエクスぺリエンスはさらによくなるでしょう。

さらなる普及を目指すためにも、今までのガソリンスタンド方式にとらわれず、新しい考え方を持つことが重要です。

文=井土亜梨沙

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