「子連れ出勤」で解決することしないこと パパママ10人の実体験

(Kazunori Nagashima / Getty Images)

宮腰光寛少子化担当相が1月15日、子どもと一緒に仕事をする「子連れ出勤」を政府として後押しする考えを表明しました。「子どもを産み育てやすい環境を」といいますが、子連れ出勤の実態はどうなのでしょうか。様々な職業のママ・パパ10人のケースを通して、必要なことは何か考えました。

ママ医師、赤ちゃん抱っこで診察

子連れ出勤の経験があるAさんは、大きな病院に勤める女性医師Aさん。小学生の長男が0歳の時から、子連れで出勤する日がありました。もちろん、手術など事前に決まっている仕事の日は預け先を確保していましたが、当番ではない土日に患者の経過を見に病院へ行くことや、緊急で呼ばれる日もあり、長男を抱っこベルトに入れたまま病室に行ったこともありました。

長男が動くようになると、ベビーカーに乗せて回診。病室の入口や、ベッドとベッドの間に置いて、患者のカーテンの中には入れないなど気配りをしました。「子どもが好きそうな患者さんなら、『ごめんなさい、子連れで』と言いながら。そういう感じではない患者さんの場合は、頼めそうな研修医に抱っこしていてもらいました」

Aさんはその後、なるべく子連れで出勤しなくてもいいように働き方を考えました。病院全体に訴えて当直の体制を改善。子育て中の後輩医師も当番を分担しながらキャリアを積めるようにサポートしています。「24時間365日預けられる託児所を持つ病院もあり、医師が働き続けるにはこうした整備も必要では」と投げかけます。

「子どもが誤ってパソコンのキーを押してしまったら……」

もともと子連れ出勤が難しい職種もあります。省庁に勤務するBさん(2児の父)は「執務室に子どもは入れない。文部科学省内に保育園がありますが、朝のラッシュ時に赤ちゃんを連れて行くのは大変なので、利用している知人はいません」といいます。

金融関係の企業に勤めるCさん(1児の母)は、「個人情報がいっぱいの職場で、子どもが間違ってパソコンのキーを押してしまったら大変。お客様の立場を考えるとできません」。看護師のDさん(2児の母)は集中治療室の担当。「子連れ出勤は不可能です。時間内は精いっぱい仕事して、引き継ぎます」と話す。

2017年、熊本市議会に赤ちゃん連れで出席した議員の行動が議論を呼びました。ある自治体の議員を務めるEさん(2児の母)は、「真剣にやり取りする議会に、子どもを連れて行こうとは思いません。議会のスケジュールは前もってわかります。子どもは0歳から保育園に通っていて、熱が出たら母に頼みます。身内が無理でも、議員は地域の人とのつながりの中で活動するのだから、お願いできるスタッフや支援者はいるでしょう」と指摘。政党の大きな演説会では託児コーナーがあり、保育士や元教員のスタッフが登壇者の子を見るそうです。
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文=なかのかおり

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