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I write about the importance of creativity in modern branding.

Andrey Armyagov / Shutterstock.com

ペプシはいつになったら、大事なのはもはや飲料そのものでないことに気づくのだろうか?

ペプシの新たなグローバル広告キャンペーン向けキャッチコピー「For the love of it(それを愛するがために)」を見た私は、ペプシがついに魅力的なブランドアイデアを生み出したのかもしれないと思った。

しかし、次のCMや類似の5つのスポットCMを見た私は、ペプシはまたもブランドアイデアを打ち出せなかっただということに気付いた。



大切なのは「it」の意味

新たなキャッチコピーを見て、私の頭には期待が膨らんだ。人々に対し、自分が好きなことをただ好きだからという理由で続けるように呼び掛ける意味があると思ったのだ。人は好きではないが安全な選択肢を取ることもできる一方で、自分が好きなものにただ好きだからという理由で挑戦することもできる。

ペプシはこのCMを、自分の心に従った決断を下す人々を応援するようなドラマに仕立てて視聴者の共感を呼び、ペプシはそうした賢明な人が好む炭酸飲料なのだというメッセージを発信することもできたはずだ。そうなればペプシは、不安や批判をはねのけて人生のチャンスに賭ける人々を象徴するブランドになれたのだ。そうした人々の動機はもちろん、「それを愛するがため」だ。

しかし、ペプシのCMは違った。発表されたのは1980年代のCMを切り出したような安っぽい広告で、液体が飛び散り、映像を音楽と無理やりシンクロさせたCMだった。

どうやらペプシは「For the love of it」の「it(それ)」を、インスピレーションを与えるようなものにする気はないようだ。この「it」はペプシ飲料のことを指しており、「茶色い炭酸砂糖水を愛するがために」と言っているのと同じだ。

私は言うまでもなく失望した。私たちはペプシという飲み物については既に知っている。非常に手の込んだアニメーションをどれだけ見せられたとしても、私たちがこの茶色い炭酸砂糖水について持つ感情は変わらない。むしろ、茶色い炭酸砂糖水の外見に固執した映像を見せられることで、ペプシがただの茶色い炭酸砂糖水だということを改めて思い出させられるだけだ。

そんなことは既に知っている。私たちが既に知っていることを伝えるのに、なぜ金を使うのだろう?

感動的な部分なしのこのCMは、誰もがペプシを愛しているかのように見せるためのわざとらしい自己顕示的な広告でしかなく、人々が共感できるような世界観を持った面白いブランドにはなれていない。

もしかしたら、インスピレーションを与える部分は今後出てくるのかもしれないし、まずは飲み物に焦点を当ててから他の部分に移ることが戦略なのかもしれない。あるいは、これがグローバルなキャンペーンであるために、全ての市場に訴求できるのは飲み物自体についてだけだったのかもしれない。はたまた、私が厳し過ぎるだけかもしれない。

あるいは、ペプシはひょっとすると、「For the love of it」の可能性が見えていないのかもしれない。

編集=遠藤宗生

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