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アドテク、企業、ベンチャーキャピタルやニューヨークのベンチャー企業について執筆するスタッフライター


直接上場は、創業者や既存株主にとって不必要な希薄化を避けることができる。テック系スタートアップのIPOでは、上場初日に株価が20%以上値上がりし、公募価格を低く設定しすぎたと批判されることが珍しくない。しかし、直接上場では新株を発行しないため、株価が20%値上がりした場合、スラックの創業者兼CEOであるスチュワート・バターフィールドは持ち分を希薄化することなく資産を増やすことができるのだ。

しかし、投資家の多くは、直接上場が広く普及する可能性は低いと指摘する。その理由は、直接上場にメリットのあるケースが少ないからだ。スポティファイの場合、上場前からブランドの知名度は高かった。スラックも800万人ものユーザーを抱え、業務アプリながら高い知名度を誇っている。


スラックの創業者兼CEO スチュワート・バターフィールド(Getty Images)

金融分野で進む「中抜きトレンド」

一方、エアビーアンドビーのようにセカンダリーセールやプライベートセールをあまり実施していない企業は、従業員や既存株主が大量に保有株を売却し、株価が乱高下することを懸念して直接上場を敬遠するかもしれない。直接上場は、資金が潤沢で新たに調達する必要のない企業にしか適さない。このため、ウーバーのような赤字企業は通常のIPOを選択して資金調達を行った方が得策だろう。

スラックの上場プロセスに詳しいある投資家によると、投資家の多くは直接上場を行うリスクは高いと考えているという。「直接上場を希望しているのは投資家よりも創業者たちだ」とその投資家は話した。

テック系企業とその投資家向けに、非上場企業と公開企業の株式を管理する「Carta」によると、現在のところ直接上場を目指す企業は増えていないという。スラックのIPOが成功した場合、状況は変わるかもしれないが、グローバル市場の環境次第では、上場時期が延期されるかもしれない。

レイトステージのスタートアップに投資をするMeritech Capitalのパートナー、Max Motschwillerによると、直接上場を目指す企業も、通常のIPOを行った場合と同様の課題に直面することになるという。

Motschwillerは、直接上場は金融市場で進む「中抜きトレンド」の一環だとみている。「多くの人は、結婚するときに大勢の客を招待して大きな結婚式を挙げるが、裁判所で結婚の手続きを済ませるだけの人もいる。直接上場であるか通常のIPOであるかなど、10年後には誰も気にしなくなるだろう。それぞれに利点があり、行き着くところは同じだからだ」とMotschwillerは話した。

編集=上田裕資

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