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アドテク、企業、ベンチャーキャピタルやニューヨークのベンチャー企業について執筆するスタッフライター

(c)slack

今年IPOを予定している「スラック(Slack)」は、スポティファイに続いて直接上場(ダイレクト・リスティング)を計画している。実現すれば、同じく年内にIPOを計画しているテック系スタートアップの創業者らの関心を引くことは間違いないだろう。

ウォールストリート・ジャーナルは先週、スラックが早ければ今年の第2四半期にも直接上場をする予定だと報じた。昨年12月にも同様の報道が流れていた。もう1つのユニコーンであるエアビーアンドビーも同じく直接上場を目指しているとされている。両社にコメントを求めたが、回答を得ることはできなかった。

スラックが計画を撤回する可能性はまだ残されているというが、最も普及している業務用アプリである同社が直接上場を真剣に検討しているという事実だけでも、テック業界のスタートアップにとっては大きなニュースだ。しかし、専門家によると直接上場を選択することが戦略上理に適っている企業は少ないという。

直接上場は情報や従業員の関与が限定され、大きなコストを支払うことになりかねない。それでも直接上場を選択する背景には、既存の仕組みにチャンレンジしたい創業者の意向が大きく働いていると言える。

「直接上場がトレンドになった背景には、ユニコーンの規模が大きくなったことが挙げられる。直接上場を目指すスタートアップは潤沢な資金がある上、他の企業が必要とするマーケティングや投資銀行による支援が必要ない」と法律事務所のパートナーであるValeska Pederson Hintzは話す。

従来のIPOとは異なり、直接上場は新株を一切発行しない。直接上場をする企業は、創業者や投資家、従業員などの既存株主が保有株を売却するためのマーケットを独自に設け、ナスダックやニューヨーク証券取引所などのマーケットメーカーを使って、あらかじめ合意した株価で買い取るバイヤーを探す。

投資銀行は、従来のようにIPO後の30日間の株価を安定させることはしない。また、通常のIPOでは従業員などの株主が6カ月間程度保有株を売却できないロックアップ期間が設定されるが、直接上場では誰でも好きなときに保有株を売却することができる。

上場コストを抑えるメリット

直接上場のもう一つの大きな特徴は、上場する企業は新株を発行せず、資金調達を行わないことだ。ドットコムバブルの時代には、資金調達がIPOの主な目的だった。

スラックやエアビーアンドビー、リフト、ウーバーなどは株式のセカンダリーセールを行っており、その際の株価を直接上場する際の株価の目安にすることができるとPederson Hintzは話す。これらの企業は、アンカー投資家となるような大手機関投資家から既に出資を受けているため、ロードショー(投資家向け説明会)を行う必要もない。

このような企業があえて直接上場を選ぶ最大の理由は、コストを削減することだ。最近上場したApptioやNutanix、Twilioが引受証券会社に支払ったコミッション率は7%だとされる。大手企業の場合は、交渉してコミッションを下げることも可能だ。

例えばスナップチャットが2017年に上場した際のコミッション率は、テック企業としては当時史上3番目に低い2.5%だった。しかし、通常は7%のコミッションに加え、ロードショーの経費や引受証券会社の旅費の半額を支払うことになる(フェイスブックとツイッターは、それらのコストを全て銀行に負担させた)。「より早く安くIPOをしたいのであれば、直接上場を選ぶべきだ」とPederson Hintzは話す。

編集=上田裕資

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