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#醸し人


地域でできたものをその場で食べたり、あるいは収穫の体験をするために、人々が里山を訪れるようになると、外貨が稼げるようになります。しかし、一方で、自分たちの身の丈にあった規模をしっかり認識しておくことも大事です。

わざわざ自然を壊し、大きなホテルを作ったり、生産量を拡大するために大規模な投資をしたりすると、これまでのバランスが壊れてしまいます。「この町で受け入れられる人数はここまで」と、自分たちの地域のことをきちんと理解しておく必要があると思います。

ナオライさんが所在する三角島(広島県)でも、寝袋持参みたいな体験をしてもらうのはどうですか? 島に立派なホテルが必要なのではなくて、来てくださる方を、ここでしか体験できないホスピタリティでおもてなしするのも素敵だと思います。50年後、100年後の地域に責任を果たせるかを意識することが大切です。

皆で未来へ向かっていきたいですね



──そうした企画においても、いかに多くの人を呼び、流動させ、お金を儲けて……というところが価値とされているように感じます。これについてはどうお考えでしょう?

一人5000円で100人に来てもらうのではなくて、一人5万円で10人来てもらう、みたいな発想です。自分たちが継続できること、そして自分たちの守っていくものを明確にし、マスマーケティングに引っ張られないことが大事だと思います。

──それがポイントかもしれません。自分たちの軸をちゃんと持っておけば、「これだけできれば良いんだ」と頭の使い方が柔らかくなる気がします。

誰もがそうですが、我々は次世代の人たちへ、前の世代から引き継いだバトンを渡す橋渡しの役を担っています。そう考えると、自分を評価してくれるのは、今目の前にいる人だけではなく、次世代の人たちでもあるのです。

次の世代から見た時に「あぁ、この自然を守ってくれてありがとう」と言われるか、「まったくひどいことをしてくれたよね」と言われるか。次世代に対して恥ずかしいことをしていないかを常に考えている気がします。

──次世代への責任感のような感覚は、いつ頃から持たれていますか?

歴史とはそういうものではないでしょうか? 私の父はよく、「お前のためにやっているんじゃない。孫のためにやっているんだ」みたいな言い方をします。時間軸が10年、30年、50年という感覚があるのかもしれません。

人生100年時代になってくるわけですから、今みたいに企業が四半期で成果を求め、それを達成しているというのは、未来の利益の先取りをしている部分もあるわけです。今数字が上がっているから良いという考え方は、私はあまり好ましく思いません。そうではなく、みんなで未来に向かっていく感覚を持っていたいと思っています。


末松弥奈子◎広島県出身。1993年学習院大学大学院修士課程修了後、インターネット関連ビジネスで起業。ウェブサイト制作やオンラインマーケティングに携わる。2001 年ネットPRを提唱する株式会社ニューズ・ツー・ユーを設立。2013年より広島で船/海運/リゾートなどを手がける家業のツネイシホールディングスの経営に関わる。2017年6月より、「世界に開く日本の窓」として日本の現状と世界の動向を120年以上にわたって報道してきたジャパンタイムズの代表取締役会長・発行人。

監修=谷本有香 インタビュー=三宅紘一郎 校正=山花新菜 撮影=藤井さおり

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