ビジネス

2019.01.24

「5千円で100人でなく、5万円で10人」というサステナブル思考

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──人と自然の共生について感じていることを教えて頂けませんか。

人間がきちんと慈しんで手をかけてこそ、自然の中で安心して生活することができるのだと思います。例えば農作物を作るときに草刈りをしたり、里山を守るために植林や伐採をしたりするように、人の手がほどこされてはじめて、自然と人間の共生と言えるのだと思います。放置し、手をかけないことは自然ではないのです。

私たちは安全に暮らすために、自然との付き合い方について長い時間かけて学んできました。人と自然、お互いにとってちょうど良いバランスが大事なのではないでしょうか。

ズバリ言うと、「自然は、自然のままで、人が手をつけちゃいけない」というような考え方が人と自然の共生を妨げてしまうのです。昨今、自然災害の被害が大きくなってしまった原因の一つでもあると思います。自然と丁寧に付き合い、向き合うことが重要であり、それなしでは様々なことが成り立たないのではないでしょうか。

──僕自身、「MIKADO LEMON」という酒のためのレモン畑をやって4年になりますが、まさに人為の天然の間を彷徨っている感じです。何も手を加えないと雑草に覆われ、逆に農薬を撒くと生物は死んでしまう。だから、「手間」が人の役割だし、営みなんだと感じます。

そして私たちは自然からの恵みで生きています。二毛作や二期作でより多くの収穫を得るための工夫をしたりすると同時に、土地を休ませる知恵も持っています。

自分たちだけが搾取するのではなく、土地も休ませてあげ、長く付き合っていくという姿勢は、これまでも当たり前にやってきたことなのです。


「スーパーでは、いつでもどんな野菜も手に入る一方で、道の駅に行くと地元で採れた旬のものを売っている。四季折々の楽しみ方がある。それって、すごく大事なことな気がします」と話す末松さん。

──自然と人の営みについて、海外から見た日本らしさはどんなところにあると思いますか?

国土や風土の持つ特性に向き合うということは、どこの国でも一緒だと思います。それは、普遍的なものではないでしょうか。課題先進国と言われている日本で、「里山資本主義」のような考え方で、地域のことは地域でできるだけ賄うことができるような社会が増えていったら面白いですよね。

太平洋を渡った食べ物は物流コストがかかるうえ、輸送時にはCO2が発生しています。流通を全く介さないのは難しいですが、地産地消のメリットは、新鮮なまま食べられることはもちろん、実は輸送コストが加算されず、地球にも優しい。そういった面もあります。
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監修=谷本有香 インタビュー=三宅紘一郎 校正=山花新菜 撮影=藤井さおり

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