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無類の車好きで知られる七五三木社長が語る、タイカンの魅力とは。「セダンでもなく、一般的なSUVでもなく、本当にスポーツカーであるという部分ですね。ポルシェのスポーツカーとしての定義を全てクリアできている車だと思います。ポルシェでは、社員全員でスポーツカーとは何たるかというアイデンティティが確立されていて、それに従って作られています。基本的にはタイカンも911も、思想も作り方も一緒で、パワートレインが違うということです。


ポルシェ初のEV「タイカン」のイメージ。

EVの大きなポイントはバッテリーの冷却です。冷却をうまくコントロールできないと、アクセルを踏めどもスピードが出ない。例えば山道などでは、何秒かの間に加速・減速を繰り返しながらワインディングロードを楽しむというのが、スポーツカーをコントロールする醍醐味ですが、EVの場合、この頻度が高いほど、バッテリーの冷却が難しくなるのです。ポルシェではここで差を付けようと。つまり、スポーツカーをスポーツカーらしく走らせることができる、そこで大きな差を付けられると思っています」。力を込めた。

タイカンの販売目標は。「日本では2020年の販売に向けて準備をしています。新時代のスポーツカーとしてプレゼンスを出していきたい。ポルシェもEVをやっています、という言い訳的な導入ではなく、タイカンで決意を見せます。既存のモデルと遜色ない程度の台数のボリュームを出していきたい」

昨今のトレンド、いわゆる「CASE」(ケース、コネクテッド=接続性、オートノマス=自動運転、シェアリング=共有、エレクトリック=電動化)戦略もポルシェらしい。「随分前からポルシェはレースに力を入れていて、素晴らしい活躍をしていますが、そこで培ったテクノロジーを安全装備、例えばぶつからないための技術として応用しています。

我々の車は自律的に運転をされる方のための車ですので、ドライブをエンジョイするために、いろんな設備や装備で気持ちよくアシストしていきます。コネクトは現在、ヨーロッパでは既にアドバンスドセーフティという進歩したナビゲーションを提供していますし、コンシェルジェのコールセンターにコネクトを介してお問い合わせいただくラグジュアリーなサービスも展開しています。シェアリングについても実は今、英米でテスト的に始めています」

100年に一度の大転換とも言われる、全世界的な業界の大変革が進む中、社内ではどのような改革に取り組んでいるのだろうか。「1998年に弊社ができてから、お客様に安定した評価をいただき、かつ安定してご購入いただいてきた事実があります。前例踏襲型のビジネスモデルの結果、素晴らしい業績を先輩たちが出してきた。

しかしこれからはガソリンエンジンではなくて電気の自動車を売っていく。前例踏襲ではダメだと、非常に危機感を持っています。我々はポルシェエレクトリック販売株式会社という、最先端の知識と最先端のインフラを備えた会社にしていかなければいけないのです。CEOとしてはどっちのダイレクションが正しいのか、リスクを取ってジャッジしていきます。今の会社を全く捨てて、新しいスタートアップの会社を一つ創る、という感覚で臨んでいます」。相当の覚悟である。

スポーツカーというアイデンティティを堅持しながら、フレキシブルに時代の要請に応え変化を厭わない。それがポルシェの強さの理由なのかもしれない。


七五三木敏幸◎1958年生まれ、群馬県出身。一橋大学卒業後、群馬銀行入社。元来の車好きが高じて89年メルセデス・ベンツ日本に入社。ダイムラー・クライスラー日本CEO、フィアット・クライスラー・ジャパン本部長、日本自動車輸入組合理事などを務め、2014年1月より現職。

文=林 亜季 写真=小田駿一

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