ビジネス

2019.01.17

苦境のテンセントが乗り出す「企業顧客」の開拓、中国版Siriも

(Photo by Yu Chun Christopher Wong/S3studio/Getty Images)

中国のテンセントは10億人以上の利用者を抱えるメッセージアプリのWeChatと、オンラインゲーム事業で売上を伸ばしてきた。しかし、2019年を迎えた今、同社は企業顧客の開拓に向けて、新機能や新サービスを立ち上げようとしている。

テンセントのゲーム事業は昨年、中国政府の規制強化により、大きなダメージを受けた。その後、同社はWeChatのビジネス利用の促進や、クラウド事業の強化に乗り出した。テンセントはアップルのSiriに似た音声アシスタント「Xiaowei(小微:シャオウェイ)」を、自動車や家庭内のスマートデバイス向けに開発し、WeChatのコンテンツの利用範囲を拡大しようとしている。

ブルームバーグの報道によると、今後はXiaoweiにボイスで指示を与えることで、QQ Musicの音楽を再生したり、タクシーを呼んだり、天気やニュースを確認できるようになるという。ただし、Xiaoweiの正式な公開時期は未定という。

一方で、テンセントはWeChatのミニプログラム(小程序、シャオチェンシュ)の企業活用を促進する動きも見せている。企業らはミニプログラム経由で、食事の出前や様々な商品の注文を受けられる。

WeChatの統括者でテンセント幹部のAllen Zhangは先日のカンファレンスの場で「今後はミニプログラムへの注力を進めていく」と述べた。「ただし、結果を出すことを急がない。なぜなら、これはWeChatのエコシステム全体に関わる施策だからだ」と彼は話した。

テンセントが企業顧客の開拓に乗り出すのは、ゲーム事業の今後が危ぶまれるからだ。オンラインゲーム事業の売上は。同社の売上の約半分を占めている。中国政府は新規のゲームの承認を、昨年12月から再開してはいるが、今後も承認プロセスの厳格化は続いていくとみられている。

野村證券のアナリスト、Shi Jialongは「テンセントが企業顧客の獲得に注力するのは、その場しのぎの施策ではない」と指摘する。同社はゲーム事業で生じた損失を、新規事業でカバーする必要に迫られている。

WeChatのミニプログラムは、Eコマース関連から教育関連まで、幅広いジャンルの企業から、新規顧客を獲得する上での重要なチャネルになるとみなされている。
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編集=上田裕資

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