開城(ケソン)工業団地を知っているだろうか。北朝鮮側、軍事境界線のほんの先にある、韓国が作った産業地帯のことだ。そこに複数の工場があり、北朝鮮の職員たちが毎日やってきて働いていた。働くのは北朝鮮人たちで、儲けるのは120余りの韓国の企業だ。
開城工業団地は、2004年に操業を開始したが、2016年の北朝鮮による長距離ミサイル発射により操業を停止した。以来、2018年現在まで事実上停止している。いま刑務所に入っている朴槿恵前大統領の指示によるものだ。
しかし実際のところ、北朝鮮側は密かに工業団地の工場を稼働させており、2018年8月には、韓国側も電力を供給する、と発表した。かつて事業を行っていた韓国企業のうち、約96%は事業を再開したいと望んでいるということだ。ヒュンダイやロッテ、KTなどの大手企業グループも参入を狙っている。両国が統一され、開城工業団地が名実ともに操業開始されるのも時間の問題だろう。
金正恩は北朝鮮に新しい風をもたらすだろう
共産主義の国がこれほど急進的な変化を遂げているのは、第一に、国家のリーダーが変わったからだと言えよう。金正恩は幼少期をスイスで過ごした人物で、完全なる「北朝鮮人」とはどこかが違う。だからこそ、父親の金正日に後任を任されたのではないか。
彼だけではない。北朝鮮の将官たちは、若い頃に北京や上海、モスクワなどの都市に駐在した経験がある。自分たちが赴任した30年前といまとを比べ、「北京やモスクワはあんなに変わっているのに、ピョンヤンは時代遅れのままだ」とため息をつく。そんな外の世界を知る者たちが国のトップ層に就くことによって、北朝鮮では前向きな変化が起き始めている。
金正恩によってもたらされた新しい風と、昔から培われてきた勤勉な国民性──それを韓国の経営能力や資本へのアクセスというノウハウとうまく合わせると、非常に刺激的な国になることは間違いない。すでに人手不足に陥っている日本とは対照的に、朝鮮半島には安い労働力、若い女性という新しい人的資源がある。
実際、北朝鮮の経済成長率はこの20年でじわじわと伸びている。1999年には前年比6%という高い成長率を達成し、2016年には日本・韓国・アメリカを上回る成長率を記録している。2017年は、国際社会からの経済制裁や干ばつによって落ち込んだが、今後も北朝鮮の経済成長率はぐんぐん上がっていくことだろう。