世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版




──そういった変革が、仮想通貨によってどのように成されるのでしょうか。

仮想通貨は、価値観とそれをもとにした行動規範を示すシンボルとして生み出されます。例えば、ビットコインは、「誠実にネットワークを維持する」という行いに対して与えられます。

また、先述のSteemitでは、よいコンテンツを生み出すこと、よいものを評価することで報酬を得ることができます。これまでは、維持されるべき社会が、たとえば国家といったような固定された形で成立していました。そこには前提としてのルールがあり、そのルールにもとづいた通貨と評価制度が存在しました。しかし、インターネットに誰もがアクセスできてグローバルに繋がれる社会では、さまざまな制約を越えて、より共感する共同体や経済圏に参加し、経済活動を行っていくことができます。

仮想通貨はそのための価値基準であり、経済活動の基盤にもなるものです。「どのような行いに、どんな価値がともなうか」をサービスに紐づけて提示できる仮想通貨は、社会を変えるための原動力になると考えています。

──よくわかりました。社会を新しく更新することは決して簡単ではないと思います。その大きな目的に向き合う理由を教えてください。

シンプルにいうと正義を成すことで、「巨悪を討つ」です。理不尽や非合理的なことに対して、自分は違和感だとか怒りだとかを感じていて、それは僕のなかでスパンの長い感情です。今すぐ何かをやって返ってくる、みたいな端的な快楽ではないんですよね。

──事業をやるということは、長い目で見て、自分の中で情熱を燃やし続けること。これは特別な才能のいる仕事だと思います。

そうですね。ある種、自分が自分であることに重きを置いているのだと思います。他者にどう見られるかより、自分が思う自分であるか、を重要視していて、だから、自分が望む社会に対して常に向き合い続けたい。達成することを目的に据えてはいますけど、つねに向き合えてるか?ということを自分に問うことが多いです。

──自分に対する期待値を常に高い位置に保つのは、生半可なことではないですよね。

社会が複雑化している中で、それぞれが見つけられる課題感ってバラバラですよね。だから、他人のミッションに口を出す前に、自分のミッションをちゃんと見つけることの方が大事だと思っています。自分は今までの経験の中から、金融とか人間の生活におけるお金ってものの歪みを是正したいという気持ちが強いので、そこに向かうってことを決めてるんです。

──個人の時代は、ブロックチェーンの原理とも共通しますね。

ブロックチェーンとビットコインは分散型の信用担保ですが、それぞれが自分の主義主張の中でやっている行いが全体として見たときに、一つのコミュニティや生態系としてワークするっていうコンセプトなんですよ。そういう意味でも共感しています。みんながそうなればいいなって思っています。SNSで他人に石を投げ合っている場合じゃないですよね。

──森川さんのこれからについて教えてください。

引き続きこの分野のサービスに向き合います。事業の展開としては事業者向けのソリューション提供にも注力していくつもりです。

社会を変えていくための選択肢をより柔軟に考えることができるようになったので(笑)同時に執筆活動なども行います。文脈の理解が必要なトピックなので、誰かが発信し続けなくてはならないと思っています。それは、僕のミッションの一つかな、と。



もりかわ・むうと◎1993年生まれ、大阪府出身。株式会社Ginco CEO。京都大学法学部在学中に起業し、ブロックチェーン領域で活動を行う。仮想通貨を安全に一括管理できるウォレット事業のほか、仮想通貨マイニング事業、ブロックチェーンコンサルティング事業を展開。著書に『ブロックチェーン入門』『ブロックチェーンの描く未来』『未来IT図解 これからのブロックチェーンビジネス』などがある。

文=長嶋太陽 写真=今井駿介

VOL.9

若き最優秀アジア新人監督が映す「パラレルワ...

VOL.11

2児の母が昆虫テック企業の「暫定CEO」になる...

PICK UP

あなたにおすすめ

合わせて読みたい