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SNSマーケティングを社会学的に考える


この約530万というRT数は、それまでの世界記録を塗り替えてしまい、文字通り歴史に残るものとなりました。RT数は、すなわち話題の拡散度でもあるため、これには海外メディアも注目し盛んに報道していたことが印象的です。

なお、それまでの世界記録は、アメリカのティーンエージャーCarter Wilkersonさんによるもの。(ファストフードの)ウェンディーズの公式アカウントに「どのくらいRTされたら1年分のナゲットくれる?」と聞いたところ、ウェンディーズ側が応答し、ユーザー達がその「祭り」に乗っかり最終的には約355万のRTを2017年の4月に達成したのでした。

個人的に興味深かったのは、世界で最もユーザーがシェアし拡散したツイートは、「誰かに何かを与えたい」という善意が発端となっていたということです。フェイクニュースがSNSで拡散することが問題になる世の中で、改めて銘記しておきたいと思います。

またこのような定量的な成果だけでなく、この企画を通じて前澤社長はなにかやってくれる人だと期待する空気感がより強まった── そんな定性的な成果を指摘しておくことができるでしょう。

ではこの歴史的なお祭りは、そのような結果に尽きるものでしょうか? ここからは、そのコミュニケーション効果にフォーカスして深掘りしていきましょう。

この1億円お年玉プレゼントは、何の「広告」だったのか?

このような超強烈な結果をもとに、「話題量を考えれば、1億円は広告費として安いし、(同時期に話題になった)すしざんまいのマグロ3億円より費用対効果は高かった」といった話題の強度について言及した意見もありました。今回の1億円お年玉プレゼントは広告として質が高かったというものです(*1)。

また、別の考察として、「今回はツイッター上に広告を出してフォロワー数を増やすのではなく、応募者にフォローと引き換えに現金を渡すというかたちでフォロワー増やした。つまり、広告に1億円を投下するのではなく、直接生活者にばらまくものだった」という指摘もありました(本件に関してツイッター社は問題ないと公式発表しているようです)。

つまり、これは「広告」ではないけれど、これだけの効果があるのであれば、まともに広告を打つのは意味無いのでは? という問題提起となりました。

この議論は、2018年末にQR・バーコード決済アプリの「PayPay」が100億円のユーザー還元キャンペーンで大きな話題を呼んだことも踏まえています。もちろん今回の1億円お年玉プレゼントと仕組みや規模は全く異なりますが、どちらも生活者に直接お金を還元することでSNS上でのバズが最大化したという意味では類似的だからです(*2)。

今回の前澤社長による1億円お年玉プレゼントは、「すごい!」という点では一致しているものの、何がすごかったのかについては、その斬新さゆえ、まだ議論が収束していないように思えます。上記のように一方では、「1. コスパのいい広告だった」と言われ、はたまた別の視点では「2. 広告の終わりを告げるものだ」と別のことを言われているのですから。

僕自身の初期の考えでは、いわゆるプレゼントキャンペーンと構造が近く、プロモーション的な手法だと捉えました。そして話題喚起度も高いことから、高いPR効果も伴うものだった。その意味で「3. コスパのいいプロモーションだった」、つまり広告とは異なるものであろうという印象でした。

補足すると、フィリップ・コトラー&ケビン・レーラ・ケラー『マーケティング・マネジメント(第3版)』(2014年、丸善出版)では、「広告とは販売促進やパブリック・リレーションズと同列にマーケティング・コミュニケーションを構成する一要素」であり、マーケティング・コミュニケーションは「企業が自社の販売する製品やブランドについて消費者に(直接ないし間接的に)情報を発信し、説得し、想起させようとする手段」であると説明されています。

そして、ポイントは「マーケティング・コミュニケーションは、ブランドの声を体現し、消費者と対話してリレーションシップを構築することを通じたブランド・エクイティに通じる」ものなのだと。

文=天野 彬

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