2人の役割分担は明確で、日々のオペレーションや数字の管理、組織マネジメントは相木が、個人投資家への対応や終活セミナー運営は清水が行っている。経営会議や取締役会では、中長期の目標や将来的な会社の方向性についてともに考える。
相木が自身の役目として最も力を入れていることのひとつが、100人を超える社員たちとのコミュニケーションだ。月に一度の全社会議に半年に一度の全社員との1on1ミーティング、社員が経営陣に対して匿名で質問や改善提案ができる制度など、さまざまな形で社員たちの声を聞くと同時に、経営者としての考えを伝えていく。
「上場をしてからはとくに多様な社員が集まってきているので、『なんのためにこの事業をやっているのか』というミッションを共有することがますます大事になってきます」(相木)。
毎年期初に行っているキックオフ合宿。初の全員参加で実施し、社員表彰などを行った。
創業家以外からはじめての社長参画には、ドラスティックな変革を想像しがちだが、鎌倉新書にすでにある組織文化を継承しながらより魅力的な組織をつくることに注力していると相木は言う。
「いい部分はより伸ばし、足りなければ補強する。チューニングをしながら事業を加速させるのが、私の仕事になります」。
鎌倉新書は今後の目標として、約3.8兆円ともいわれるライフエンディング市場において「近い将来に事業規模を10倍にすること」を公言しているが、それは単に売り上げを指すだけでなく、人々から10倍感謝される存在になることを意味するのだと2人は口を揃える。
「仏教書からスタートをした鎌倉新書は、気がつけばこの国に必要な『高齢者×IT』のサービスを提供する会社になりました」と清水は言う。
「死の周りにある高齢者の方々の悩みや課題に対して、さまざまなサービスをシームレスに提供していく──それが、われわれが社会から負っている使命だと思っています」