自治体の職員採用がいまの形ではじまったのは1950年代。法律、経済、土木、建築、設備といった今も続く試験区分は、戦後復興と高度成長のニーズからきている。
ところが2010年代になって、とりわけ大都市は、大きな変化にさらされている。日本全体で人口が減り続けるなかで、住んで、働く街として選ばれなければ、衰退の道しかない。そこで、創造性を発揮した施策を打ち出し、魅力的なまちづくりを行う。さらには、それをデジタル空間へうまく発信することが求められる時代となった。
アウトソースでなく、真っ正面から取り組む
そんななか神戸市は、2019年度の採用試験から採用に「デザイン・クリエイティブ枠」という試験区分を設けることを発表した。
デザイン・美術・音楽・映像などを学んだ方を対象とするため誤解されやすいが、いわゆる専門職ではない。採用後は、法律や経済を学んだ職員と同じく、あらゆるセクションを渡り歩くことになる。自治体では極めてまれなこのチャレンジの背景を紹介したい。
民間企業でもデザイナーのような専門職を正社員として抱えるか否かは議論がある。自治体も同じだ。一般に高度な業務ほどアウトソースして、最新の技術やノウハウを取り込むほうが得策だといわれている。
デザイン・美術・音楽などを学ぶとクリエイティブな発想が身につきやすいが、そうした人材は昔ながらの職場には馴染みにくい。働くことになったとしても、上司や同僚がそのままでは、単に浮くだけだ。働きにくさや違和感を感じて、半年や1年で辞めてしまうだろう。
このようなことは理解しながらも、神戸市はあえて、クリエイティブ人材を正面から受け止め、職員の中に組み込んでいこうと考えた。