「究極の美と力」を望むなら、レヴァンテ・トロフェオを外せない

マセラティ・レヴァンテ・トロフェオ


ご想像通り、このV8には津波のようなパワー感がある。車重が2トン以上なのに、アクセルをさりげなく踏んでいくだけで猛烈な加速感に体を運転席に激しく押さえ込まれる。トルクコンバーター付き8速A/TとAWDシステムがその限りのないトルクを後輪に送るのだが、必要に応じて50:50で後輪と前輪両方に直ちに送り込むこともできる。

ということは、思い切りアクセルを踏んで素早い加速を要求しても、その優秀な4輪駆動システムと後輪の左右駆動力をうまく配分し、4つのタイヤに適度のトルクを分散してグリップを保つ。
 
若いゴールデン・リトリーバーに「散歩」と言えば興奮気味になるように、このトロフェオも、エンジンをかけて1速に入れ、アクセルを踏むとどんどん先へ行こうとする。しかし、同車は驚くようなパワーを持っているだけではない。足回りとコーナリング性がとても優秀だ。

確かに、乗り心地は多少硬めに設定されているので、GT系SUVというより、思い切り高性能の高級SUVにはなっているけど、ワインディングロードでの走りに思わず微笑んだ。こんなに大きくてこんなに重いSUVは、レースカーみたいな走りができてはいけないだろう。


 
ところで、僕は走行モードのスイッチを長押しして、コルサ、いわゆるレースモードで走っていた。コルサモードに入れると、車高が2cm下がるし、スロットルレスポンスが敏感になり、ステアリングと変速シフトがよりクイックに変わる。

しかも、あの野獣の鳴き声のエキゾーストノートがさらにヤバくなる。でもトロフェオは、プッシュすればするほど応えてくれる。ステアリングが適度な重さで正確にターンインしてくれるし、コーナーに入っても不思議なほどロールしないし、安定性がいい。また6ポットの強力で大型のブレーキがついているので、ブレーキフィールが良くて、制動力は十分と言える。
 
先に触れたように、トロフェオは大きくて重いので、サーキットでの走行会には向かないとしても、ワインディングロードの走りにはピッタリ。いや、ピッタリすぎる。というのは、サーキットでは大きすぎる感じがする代わりに、ワインディングでは小さく感じる。

街中でも確かに格好良く乗れるけど、しょっちゅう乗るなら、たまには街から出て数十分100km/hほど走らせてあげようね。かわいそうだから。何か弱点があるかと聞かれたら、それは1990万円という価格だ。痛い。でも、なんて素敵な痛さなんだろう。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>

文=ピーター ライオン

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