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HRマネジメントの新潮流


人と企業の関係性を「終身雇用」から「終身信頼」へ

ここで、ぼくの友人の篠田真貴子さんが監訳された『ALLIANCE アライアンス』(著者:リンクトインの創業者リード・ホフマン氏)という本を少しご紹介します。この本の序文で、篠田さんは「終身雇用ではなく終身信頼」ということを仰っており、人と企業の関係性のあり方の一つを示唆されています。


『ALLIANCE アライアンス』人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用リード・ホフマン 著/ベン・カスノーカ 著/クリス・イェ 著/篠田真貴子 監訳/倉田幸信 訳

篠田さんとおしゃべりをしているとき、次のような話をよくします。

「この本はアメリカの社会や企業文化を前提としていて、日本とは『信頼』をキーワードにする背景が違う」

篠田さんは日本的企業文化の代表格とも言える銀行での就業体験に加えて、留学経験や外資系企業での経験もあるので、その違いについて色濃く感じているのかもしれません。

ぼくの理解としては、日本が「信頼」をベースにした関係性を必要とする理由は、先程の通り「約束したことが不履行になっている」ことにより、人と企業の信頼感が薄れているからだと思います。では、外資系企業(あるいはスタートアップ)によく見られる短中期な雇用がいいかというと、必ずしもそうではありません。

この場合、企業への愛着心は醸成できず、非生産的な行動を促す傾向が出てきます。いつか辞めるだろう、と思いながら形式的に遂行した心無い仕事は、不十分で結局直さなければいけなくなったり、引き継ぎを放棄したり、余計なコストを生むことになります。なので、雇用の期間や性質ではなく、こういった「契約性」とは別の概念を模索する価値はあるわけです。

「契約性」を前提とした従来のHRマネジメントでは、人と企業の関係性が途切れるポイントは大きく二つあります。

一つは、エントリー時です。採用活動において、入社するか・しないかは働く側と会社側、双方の意向が合致する必要があります。会社側は入社してほしいと思っても、働く側のモチベーションが合致せず、入社に至らないケースというのは珍しいことではありません。

また、働く側がどんなに懇願しても、個々人の事情や会社側の都合で入社に至らないケースがあります。従来の考え方では、採用活動は時間軸があまり存在せず、入社しなかった人と企業の関係性はここで離脱します。

もう一つは、退職時です。退職した人材の再雇用というのも、一部の企業では取り組みをはじめていますが、まだまだ一般的ではない考え方です。ですので、退職した後、人と企業との関係性が途切れるのであれば、辞め方に良いも悪いもなく、会社都合による一方的な引き止めや会社に不利益となる辞め方も必然となります。

つまり、これらは「契約ができない」あるいは「契約が終わる」ということが、「関係性が途切れる」ということになっているわけです。労働人口が減り、限られた人材と時間で最大の成果を出していかなければならない状況で、「契約性」をベースにしたHRマネジメントは、限界に来ているのではないでしょうか。

ここまで読んで、構造がわかりにくいなー、と思った方。正しい(ぼくもそう思う)。なので、図にしてみます。


文=佐野一機

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