2016年に決定した英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)やドナルド・トランプの米大統領への就任、そしてその後のオーストリア、イタリアでのトランプと似た考えを持つ指導者らの選出によって、欧米では右寄りの政治勢力が大幅に拡大した。こうした変化は、伝統的な民主主義社会の“終わりの前兆”だといわれてきた。
だが、英誌エコノミストの調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」によれば、民主主義は健在だ。パリの「黄色いベスト」運動、米国を中心とするウィメンズ・マーチなどに見られるとおり、力強い参加型民主主義は姿を消していない。
ただし、EIUが先ごろ発表した民主主義指数に関する最新の報告書の編集者は、(こうした運動に)参加する人の増加は、民主主義にとって楽観的な材料だと述べる一方で、「政治は世界中で二極化し、強権政治が台頭している」と指摘。「“民主主義不況”が底を打ったと言うのは時期尚早だ」との見方を示している。
不安視される各国の民主主義
・米国
EIUの民主主義指数は、世界167の国・地域の民主主義の水準を測るものだ。最新の報告書によれば、トランプ政権下の米国の民主主義は、「欠陥がある」と見なされている。トランプが大統領に選出される以前は「完全な民主主義」との評価だったが、その後に格下げされたままだ。
EIUはこの結果について、「米国の政治は非常に党派的だ…与野党はますます、互いの計画を阻止することばかりに力を入れるようになっているようだ。それが、政策決定に不利益をもたらしている」と批判している。評価が下がった原因は、トランプだけではないということだ。
全体における米国の順位は25位。前回調査での21位からさらにランクを下げた。バラク・オバマが大統領に選出された2008年には18位だった。ワシントンの状況が変わらなければ、2020年の大統領選後には30位以下になる可能性もある。トランプが再選されても落選しても、こうした傾向に変化が現れることはないだろう。
米国では、政府に対する市民の不満が何年も前からくすぶってきた。調査会社ギャラップの世論調査の結果を見ると、「議会を支持する」と答えた米国人の割合は昨年1月初旬~11月中旬、平均18%だった。2000年(クリントン政権時)の40%、2010年(オバマ政権時)の20%よりも低い水準となっている。