その他の国でもそうであるように、失業者や労働者階級は、体制への信頼を失っている。フランスでも、燃料税の引き上げに対する反対を訴えるデモをきっかけに、暴動が起きている。これは、単なる増税の問題ではない。国民のほぼ半数が、教育を受け、都会に暮らすエリートたちに腹を立てている。
近づく「限界点」
欧州、そして世界中で、社会の上層に位置するエリートとされる“保護された”集団への抵抗が激しさを増している。エリート層は自分たちほどの成功を手にしていない“保護されていない”人たちに注意が払わない。だが、その守られていない人たちが、自分たちに注意が向けられることを要求している。こうした「倫理観に関する駆け引き」が、欧州全体に広がっている。
ドイツでは、政界からの引退の意向を明らかにしているアンゲラ・メルケル首相に代わる与党キリスト教民主同盟(CDU)の新たな党首が選出された。同国では今後、保守化が進むことや、主要政党がより大衆迎合的になることが考えられる。
EUの基盤であり、原動力となっていたのは「統一された欧州」という考えだ。域内の政治においては数年前まで、これは共通した考え方だった。だが、経済情勢の変化に伴い、これに対する支持は失われてきた。
欧州の統一が、実際にかなり実現可能な考えだったというわけではない。だが、実現に向けた努力は、何世紀にもわたって繰り返された戦争で傷ついてきた大陸にとって、道理にかなうものだった。問題は、EUがさらに力強い存在にならない限り、目標は達成できないということだ。一方、市民の大多数は、中央集権化された現状にうんざりしている。
EUがどうすればこれらの問題を解決できるのか、それは分からない。ブレグジットが、EUの完全な崩壊に向けてのテスト・ケースだったということになる可能性もある。