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エリック松永の”Innovation and beyond”


「過去にあった大事なもの、本物さえ見抜く力を持っていれば、未来へつなげていける。過去に新しさのイノベーションの芽があって、それを新しいものと組み合わせることで未来が創造される。新しいものだけじゃダメなんだよ。過去のエッセンスがあるから、未来なのに懐かしさを感じられる。それが大事」

だから今も、出演するアーティストを選ぶときには、デモテープを聴いて、ライブへ行って、ミュージシャン本人に会うという湊さん。

「俺は、誰の影響を受けたかとか、そういうのを正直に言う奴じゃないと好きになれないんだよ。今まで会ったなかで、”懐かしい未来、新しい過去”を感じさせてくれたアーティストは3人いてさ。坂本龍一、佐野元春、山下達郎だね」

技術の進化が人を鈍化させる

流通する情報量が圧倒的に多い現代でも、昔と変わらず大切な要素があると湊さんは力説します。

「ネットの時代は加速していくし、どんどん技術が進化していくわけじゃない。ネットの世界では簡単にWHOとかWHENは調べられる。でも、その後に続く、WHY?が大事なんだ。WHOとかWHENのさらに奥へ入って考えなきゃけいない。若い世代に一番伝えたいのはそこなんだ。

もう一つ、仮に成果が出たとして、なぜこれが受けたのかをいろんな角度から検証し直さないといけない。それって考える力が必要になるじゃん。でも残念ながら、便利になるにつれて考える力は失われていく。

俺は、『便利』と『堕落』はワンセットだと思っている。便利になっていくのはいいことだよ。誰もが宇宙にも行けるようになるだろうし、がんだって画期的な治療法ができるかもしれない。でも、AIは単純作業には向いていると思うけど、カルチャーを扱うのは面倒で複雑だから、少し難しいだろうね。カルチャーって人間がいじくらないと進化しない。だからこれから若い人たちは、なるべく面倒なことをしたほうがいい」

イノベーティブでなく「プログレッシブ

「イノベーションってさ、俺にはビジネス的に感じるんだよね。だとすると、イノベーションとロックみたいなカルチャーは、本当はなるたけ離したいんだ。だからカルチャーにはイノベーションではなく、プログレッシブという言葉を使いたい。プログレッシブって言葉には商業主義的な意味がないんだ。斬新性や進行性の連続という点で、プログレッシブこそがエリックの言う”Innovation and beyond”なのかもしれないね」



70歳を超えても新しいものを創り出すパワーに溢れる湊さん。今も新しい企画を提案し続けています。ただ斬新で奇抜なだけでは”Innovation and beyond”は実現できない。過去を振り返りきちんと評価できること、過去を客観的に評価できる目をもつこと、そして、そこに新しいものをコラボレーションさせることで人を喜ばせる体験を創り出す。

過去の本当に大事なものを見抜く力、そして新しいものと実験的にコラボレーションする原動力は、”自由”であること。

湊さんの定義する「プログレッシブ」な人間とは、斬新的、革新的、進歩的であり、かつ商業主義に流されていない人。商業主義に流されないというのも大事なキーワードだと感じました。

さまざまなヒントを与えてくれた湊さんのお話。湊さんの今後の仕掛けもウォッチしつつ、”懐かしい未来、新しい過去”のコンセプトをこのコラムでも追いかけていきたいと思います。

文=松永エリック・匡史

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