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エリック松永の”Innovation and beyond”


公共放送という性格上、NHKは保守的、官僚的な組織とみられがちです。しかし、湊さんのような「アウトロー」的存在が風穴を空けられる、自由な気風も存在します。そうしたブレイクスルーは、NHKの看板番組でも実現しました。

「僕の尊敬する先輩が『NHK特集』という番組を始めていて、『いつも好き勝手やってるおまえのネタから、なんか使えないか』って聞かれたので、『東大法学部出身で今、第一勧銀で働いている小椋佳という面白いのがいて、テレビには出ないけど、1回だけ口説けると思うからやってみませんか』と提案したわけ。そうしたら1回だけ、観覧を公募して反応がよければNHKホールでやろうということになった。蓋を開けてみれば何十万通も観覧希望が集まり、オンエアしたらなんと視聴率が21%。多分、当時のNHK特集ではトップクラスの視聴率だったんじゃないかな」

すると、周囲や上司の湊さんを見る目が変わっていきました。

「俺はわがままで好きなことをやっているだけで、上司は首をひねりつつもやらせてはくれていたんだけど、成果が出たら『湊君、自分の好きなことをどんどん提案しろよ』って言うようになったんだ」

こうした成功体験を積み重ねることによって、湊さんは大組織の中でイノベーションを実現させる法則を少しづつ掴み取っていきました。

「上司の態度が変わり、なるほどなと思ってちょっとだけ切り替えたのは、まずは多くの人々が喜ぶことを考えようと。で、成果が出せれば好きなことができる。ただ、それだけだと停滞するから、必ず実験的なことをやろうとした。実験的というのは、新しいことをやるのとイコールだから、『人の喜ぶことをやる』『成果を出す』『実験的なことをやる』を3点セットにして繰り返す方法論に切り替えたんだよ。それがイノベーションにつながっていったんだ」

未来につながる「過去の本物を見抜く力

74歳となった今も、湊さんはイノベーションへの飽くなき追求を止めようとしません。その思いは、ある「キーワード」に集約されています。



「俺はこれからも面白い企画をやっていく上で、”懐かしい未来、新しい過去”ってのを提唱しているんだ。たとえば1970年代には、女性講談師の神田紅さんに『ロック講談』というラジオ番組をやってもらった。最初は『なんでロックと講談なんだ』って局内でも文句を言われたけど、まあ自由だから結局は企画が通って。ビートルズとかローリング・ストーンズを講談にして、曲をかける。そしたらさ、めちゃくちゃ受けたんだよ。特に局内の上司とか偉い人たちにね」

その当時は新しかったロックに、日本の伝統的な講談をミックスする。このあたりから、『新しいものと古いものも、”本物”をミックスすればいいんだ』という考え方が芽生えてきたといいます。

文=松永エリック・匡史

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