熱狂から社会実装へ 冷静に見るブロックチェーンの今

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日本の企業も、仮想通貨のマイニング分野に次々と参入しましたが、数百億円の損失を計上して、開始発表から半年後に撤退を決めるものなどもあり、続々と縮小、撤退となっています。それぞれ事情はあるかもしれませんが、ガートナーのハイプ・サイクルに当てはめると、熱狂に踊った格好になります。ハイプの吸引力はなんとも恐ろしいものです。

ブロックチェーンで何をしたいのか

ブロックチェーンに詳しい近畿大学の山﨑重一郎教授は、「そもそもブロックチェーンが不要な目的に使われているものが多い」と指摘します。では、事業案を考える時、ブロックチェーンを使うか使わないかは、どう判断すればよいのでしょう?

世の中にはすでに、その適不適を考えるフレームワークがいくつか発表されています。今回はその中でひとつ、米国の友人から教えてもらったアメリカ国立標準技術研究所(NIST)の「Blockchain Technology Overview」のペーパーを紹介しましょう。

NISTによれば、以下の6つの要件を満たす場合のみ、ブロックチェーンが役に立つ用途となり得る。そうでない場合は、データベースなど既存の技術を使うのがよいということになります。

1. 一貫し、共有されたデータストア(データを保存するソフトウェア)が必要か?
──ブロックチェーンは、過去から一貫したデータストアを提供するものだ。それが不要なら、ブロックチェーンは要らない。 電子メールやスプレッドシートを検討すべき。

2. 二つ以上の実体がデータを提供する必要があるか?
──ブロックチェーンは複数の提供者からのデータに用いられるのが一般的。単一の実体からのデータの場合は、データベースを検討すべき。

3. 一度書き込まれたデータ記録は、決して更新も削除もされないか?
──ブロックチェーンは過去のデータの変更を許さない。それゆえ、データを強力に監査できる。 更新や削除がされる場合、データベースを検討すべき。

4. 機密の識別子がデータストアに書き込まれることはないか?
──個人情報のように長期的な守秘を必要とする機密のデータは、たとえ暗号化されていてもブロックチェーンには書き込むべきではない。 暗号化機能の高いデータベースを検討するべき。

5. 書き込みアクセス権のある実体が、データストアを誰がコントロールすべきか決めるのは難しいか?
──データストアを誰が運用するかについて、信用やコントロールの問題がなければ、従来型のデータベース・ソリューションで十分だ。マネージドデータベースを検討すべき。

6. データストアへのすべての書き込みの、改ざん防止されたログが欲しいか?
──何がいつ起こったか監査する必要がなければ、ブロックチェーンは要らない。 データベースを検討すべき。

もっとも、そもそものテーマが適切でなければ、どんな技術を使っても意味はありません。新しい事業案を考える時、手段、つまり技術やソリューションから発想すると失敗することが多いことが知られています。誰のどんな問題を解決するか、どんなニーズに応えるか、といった目的から考えることが大切です。ブロックチェーンについても、この革新的な技術で何をしたいのか、よく考えることです。
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文=本荘修二

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