ベトナム政府のネット検閲、「経済に悪影響」と現地企業も反発

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ベトナム政府はフェイスブックが、同国が新たに導入したサイバーセキュリティ法に違反していると非難した。人を中傷するような投稿や反政府的なコンテンツが放置されているという。

ニュースサイトのViet Nam Newsによると、ベトナムの情報省(MIC)はフェイスブックが、オンライン広告の規制に従わず、税金を支払わないことも問題視しているという。

調査企業ANTSによると昨年、ベトナムでフェイスブックは2億3500万ドル(約250億円)の広告売上を得たが、適正な税金を収めてないという。一方で、MICはフエイスブックが悪質コンテンツを迅速に排除しておらず、不正なアカウント情報の提出も拒否していると述べている。

フェイスブックは昨年前半に、ベトナム政府から12件のデータ提出要請を受けたが、実際に応じたのは2件のみだった。

ベトナムでは新たなサイバーセキュリティ法が1月1日から実施され、コンテンツの検閲を強化している。この法案で政府はグーグルやフェイスブックなどの企業に、ベトナム国内にデータセンターやオフィスを設置することも求めている。

政府はまた、テック企業らが悪質なコンテンツを24時間以内に削除することを求めている。反政府的な主張や、公的秩序を乱す情報、政府の運営に困難をもたらす投稿なども規制対象とされている。

フェイスブックは今回の報道に関し、直接的なコメントを避けており、「現地の法律に従う」という従来のスタンスを変えていない。ベトナムと同様な制度を持つ中国で、フェイスブックへのアクセスはブロックされている。

プライバシー保護団体Privacy InternationalのLucy Purdonは昨年、筆者の取材に次のように述べていた。「テック企業らに特定の政府がコンテンツの検閲の役割を押しつける動きに対し、企業は反発すべきだ。企業らは国際的な基準で、ユーザーの表現の自由を守る責任がある」

ただし、ベトナム政府は経済界からのプレッシャーを受けて、この制度を見直す可能性もある。「今回の法律は海外企業からのベトナムへの投資に悪影響をもたらすことになる。ベトナムのデジタル分野のイノベーションを阻害してしまう」と現地のテック業界関係者は述べた。

ベトナムの業界団体Digital Communications Associationも、この法律の施行がベトナムのGDP成長率を1.7%低下させ、海外からの投資額を3.1%減少させると述べている。

編集=上田裕資

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