SNSマーケティングを社会学的に考える


このような傾向を日本と他国との比較の視点でさらに見ていくと、例えばフェイスブックについては、先述したように日本は約14%だったものが、アメリカでは約70%を記録します。イギリスが約60%、ドイツが約50%。そこまでの差ではないとはいえ、インスタグラムにおいても日本が最も低いです。

一方で、例外的にツイッターはまあまあ健闘していると言えるようで、やはり日本とツイッターの相性の良さはまだ健在のようです。



次のチャートは、ソーシャルメディアを利用してどんなメリットを感じたのか、日米独英で比較しています。

例えば「暇つぶしができた」や「自分が興味のある情報を得ることができた」のスコアでは日本も他国と変わりませんが、「社会や経済に関するニュースを得る」では日本は少し低くなります。



さらに「新しい友人ができた」「相談相手ができた」といった新しいつながり創出や「家族や友達との結びつきが深まった」「しばらく連絡を取っていなかった人と再び連絡をとるようになった」という既存のつながり強化の面では、圧倒的に劣後してしまいます。

つまり、日本のソーシャルメディアは、あまりつながりのために利活用されていないことが示されているのです。総務省の担当者も述べていましたが、どのような社会調査であっても、日本では親しくない人とSNSで親しくなるということをあまりしないのだそうです。つまり、新しいつながり創出の場として機能していないと。

この記事を読むみなさんもそのような使い方でしょうか? そして、なぜだと考えるでしょうか?

さまざまな説明のかたちがありえますが、本稿ではひとつ「日本人の精神構造」にフォーカスして、説明を組み立ててみたいと思います。

安心社会 vs. 信頼社会

日本を代表する社会心理学者の山岸俊男氏は、安心社会と信頼社会という有名な概念を提起しています。ここではエッセンスを紹介するにとどめますが、両者には以下のような違いがあります。

「安心社会」は、決まったメンバーとの長期的関係を重視し、メンバー間の同質性を保ち、それに基づく社会的結びつきや経済的なやりとりを大切にする社会。そこでは、そのようなつながりからもたされる「安心」がコアの価値とされます。

一方で「信頼社会」は、異質な人々の参入、外部からの参加を肯定的に評価・活用することで、社会的結びつきや経済的なやりとりを活性化し、短期的な取引関係を数多く産出します。そこで重視されるコアな価値は、つながりをもたらす「信頼」です。

人と人とのつながり、そしてその総体としての社会の組成について、2つのアーキタイプがあることがここでの論点。そしてこの説明を読むと、地域コミュニティ、学校や職場など多くの日本組織が、「安心社会」に近い仕組みで成り立っていることを想起されるのではないでしょうか。

山岸氏もこの構図をもとに、日本では集団外部の他人に対する信頼度が低く安心社会的な色彩が強いことを指摘していました。先述した日本人の新しいつながり創出機能の弱さは、こうした「知らない人は信用しない」的な価値観が根強いことに起因していると言えるでしょう。

文=天野彬

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