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左から市來敏光取締役・最高執行責任者、大西俊輔代表取締役社長/工学博士、八坂哲雄取締役・研究所長/工学博士(共同創業者)

地球を周回する人工衛星。地上の観測には特定の条件を満たす必要があることを知っているだろうか。ほとんどの衛星はカメラを用いるため、地上が太陽に照らされる晴天の日中しか観測できない。地上に電波を反射させる合成開口レーダー(SAR)衛星では、夜間や天候不良時の観測も可能だが、重量が1トンを超え1機あたり数百億円のコストがかかる。

QPS研究所は、この常識を覆そうとしている九州発のベンチャーだ。世界で初めて1mの高分解能ながらコストを数億円に抑えた、100kg以下の小型SAR衛星を開発した。

「36機打ち上げれば、世界中どこでも、どんな天候でも約10分で撮影し、最新の状況を把握できる」(市來敏光)

交通の効率化、都市の安全対策強化、災害時の状況確認など、衛星画像の使い道は大きい。例えば、人や車の移動状況を示す画像データに、気象や交通のデータを組み合わせAIで分析すれば、より高度に渋滞緩和や最適ルート診断、事故・危険の予測ができる。

「地球観測の新たな情報インフラとなる可能性を秘めている」(大西俊輔)

同社は、九州大学名誉教授の八坂哲雄が、九州に宇宙産業を根付かせるため2005年に創業した。同大学の出身で、在学時に衛星を打ち上げた実績もある技術者の大西はこれに共鳴。一度は収益構造ができていないとの理由で八坂に断られたが、入社後に即、社長になり事業を牽引するという条件付きで13年に参加し、小型SAR衛星の開発に名乗りを上げた。そして16年、やはり九州出身の市來が、技術者だけだった同社の経営を支えるため、産業革新機構から転身し参画した。

小型SAR衛星の実現には、大型で軽量なアンテナの開発が必須だった。これには、創業以来、培ってきた九州の企業との連携が功を奏した。約20社と形成した宇宙産業のクラスターだ。この絆をもとに、各社の技術力を結集した成果が、他にない金属メッシュ素材を利用したパラボラ型アンテナにつながった。

「すごい技術をもつ中小企業が九州にはたくさんあるんです」(八坂)

社名のQPSは「Q-shu Pioneers of Space」の頭字語。同社は19年前半に初号機の打ち上げを予定している。

文=眞鍋 武 写真=小田駿一

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