外国人受け入れ拡大に揺れる今、難民ネイリストに出会って考えたこと

Krasula / Shutterstock.com

筆者は以前、日本の介護施設で働くアジア出身の女性を取材したことがあります。言葉や文化の壁はあっても、高齢者への気配りが評価されていました。このたび入管法の改正で労働者の受け入れが拡大するとの報道を見て、外国人が日本で働くとはどういうことか改めて考えています。東京都内に、難民が働くネイルサロンがあると知り、予約を取っておじゃましました。
 
ミャンマー出身、2児の母

東京都港区内、地下鉄駅からも近いビルにネイルサロン「アルーシャ」はあります。メインのネイリストはミャンマー出身のノンノンさん。40代後半で、大学生と高校生の母。ネイルの仕事は7年ほどしています。筆者の娘が小さい頃の写真を見て、ノンノンさんは笑顔に。会話のきっかけになりました。


 
ミャンマーで民主化運動に参加し、タイへ逃れて1992年に来日。事前に、サロンを経営する岩瀬香奈子さんから「ノンノンはこれまで取材を受けて、つらい話をたくさんしてきたので…」と言われ、筆者は子育てやネイルのことを中心に質問。塗り終わるまで1時間近くの間、和やかにおしゃべりしました。
 
筆者は、普段は手の爪には何もしていません。ノンノンさんに「爪周りのお手入れと透明なジェルを」と相談すると、「下地はクリア、爪の先にラメのグラデーションを入れては」と勧められました。なるべく地味な色で…と消極的な筆者に、ノンノンさんは肌色になじむ落ち着いたピンク系のラメをブレンドして塗ってくれました。日本語が上手で、おしゃべりしながらも手際よく甘皮を取り、爪を磨き、何回かジェルを重ねて仕上げます。
 
ネイルにはまり、自主練重ねる

日本に来て、ノンノンさんは公的な機関の美容に関する講座を受けました。勉強する中で「ネイルにはまった」そうです。自主練も重ねました。日本のママ友や知人に「練習したいから」と塗ってあげると喜ばれ、千円ほどもらうことも。

2012年に岩瀬さんのサロンでデビュー。ノンノンさんはメールや電話を使いこなして予約を確認し、仕上がりの写真も上手に撮ります。手がきれいに見える角度を教えてくれて、筆者の指先も撮影。色やデザインを考え、お客さんが喜ぶのを見るのが楽しく、やりがいがあるとか。


 
日本で結婚したミャンマー人の夫は料理が得意。「彼は飲食店で働いたこともあり、日本の料理やお弁当作りも得意です。子どもたちは日本生まれの日本育ちでマーボ豆腐や肉じゃが、カレーが大好き。長女はUNHCRの奨学金で大学に通っています。日曜日は、家族そろって教会に行きます」。今後、体力的にきつくなってきたらネイルを教える仕事をしたいということでした。
次ページ > 言葉よりも技術が大切

文=なかのかおり

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事