ビジネス

2019.01.17

なぜそこまでバリューを浸透できるのか? メルカリの「カルチャー作り」

メルカリ取締役社長兼COOの小泉文明



東京レインボープライドの共同代表理事 杉山文野

メルカリは優しい宗教

杉山:以前オフィスに伺った際にも、各自のパソコンにバリューが貼ってあったり、おそろいのTシャツを着ていたりしましたね。当時もかなりアプローチが強いと感じました。
 
小泉:外から見ればちょっと宗教チックかもしれませんね(笑)。実際、僕自身宗教が普及したプロセスから学ぶこともありますし、今の時代に合わせた優しいアプローチをしてカルチャー作りをしています。
 
バリューがただのお題目ではなく、本当にそれぞれの意識に根付いていれば、組織として大きな影響を作りだせるし、意思決定の方向性も決めやすい。
 
なにか問題が起こればすぐにミッション&バリューに戻って、自分たちの進もうとしている方向性が正しいのか考えるようにしています。
 
杉山:バリューへの取り組みはいつ頃からされているんですか?
 
小泉:創業期の社員20名くらいの頃に当時の経営陣で決めました。コンシューマーサービスの運営会社は、サービスが会社のミッションを体現しているから、わざわざ別個に会社のミッションを設定しない、ということも少なくありません。「サービスの雰囲気にあう会社になればいいよね」という感じですね。
 
ですが、サービスは数字が落ちることもあるし、場合によっては全く新たなサービスで再出発することもある。そのときにメンバー間の意識が統一されていないと、チームがバラバラになってしまう可能性もあるんです。
 
これから会社を始める人は、サービスの方向性とは別に会社のバリューを定義しておくといいと思います。会社の軸がはっきりしていれば、なにかあってもきっと修正できます。
 
ポジティブなことを口にすれば、世界はもっと良くなっていく
 
小泉:ダイバーシティについては、これからもっと成功事例を増やしたいですね。産休・育休制度がうまく機能しても、「そうした取り組みは、メルカリは若い人が多い会社だからできる」と言われてしまうことが多い。そうした意見に対応できるよう、エビデンスを積み重ねたいですね。
 
これから社会はダイバーシティを重視する方向に進みますが、そのときにメルカリを成功事例として取り上げてもらえるようになりたいです。そのファクトを世の中に発信していきたい。
 
杉山:実例があれば、ほかの会社が挑戦するためのハードルも低くなりますよね。メルカリをお手本にして、社会全体の流れが変わっていけばいいですね。
 
小泉:そのためには、もっとメルカリ内部の活動を明確に発信しなければなりません。大企業はこうした情報を明らかにすることに消極的なこともあるので、僕らが頑張りたいですね。
 
メルカリは色々なものが売買されるプラットフォームを運営する会社です。特定の層に向けて商売をするというよりも、全ての人が不快感なく使えるサービスを目指しています。
 
社内だけではなく、利用してくれるお客さんたちの価値観も大事にする。その積み重ねで、誰もが自分の価値観を大切にできる環境をつくれたらと思っています。
 
杉山:ぶれない軸があるからこそどんどん変化を遂げ、多様なすべての人たちへのアプローチを可能にしたんですね。今後もメルカリの積極的なシェアを期待しています。

連載:LGBTからダイバーシティを考える
過去記事はこちら>>

構成=野口直希 写真=小田駿一

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事