それでは、なぜ大人が子どもに比べて本質的な見方を出来ないのだろうか。大人の方が子どもよりも経験や知識は多いはずである。しかし、筆者はむしろそれが問題であるのではないかと考えている。
人間は基本的に合理的に動くため、一つ一つの事象に対してゼロから思考をせず、過去の経験を基にある程度のカテゴライズをして、カテゴリー毎に最適と思われる思考をしていく。過去の経験が判断軸になるため、歳を取れば取るほど、その判断スピードは速くなっていく。しかし、裏を返せば判断の柔軟性は失われていく。
過去の記事でも紹介したが、ほとんどの大人がお小遣いをもらう時に、親から「無駄遣いはしちゃいけないよ」と言われて育っただろう。そのため、お金を得たら貯めるのが最善であるかのような刷り込みがなされ、使うべき時にしっかりと使ったり、投資をしてお金に働いてもらうという発想を持ちにくい。
財務省が9月3日に発表した2017年度の法人企業統計によれば、企業(全産業)の「利益剰余金」、いわゆる「内部留保」は前年度比10.2%増の507兆4454億円と、初めて500兆円を突破した。500兆円といってもイメージがわかないかもしれないが、2017年度の日本の実質GDP(物価調整をした国内総生産)が約533兆円であったことを考えると、いかに日本企業がお金を使わずに貯めこんでいるか分かるだろう。
つまり、会社の経営陣という一般的に見れば優秀な大人たちですら、未だにお金をうまく使えず、貯めこむということしか出来ていないのだ。
大人の思考回路を捨てて接する
知識が経験がにより思考回路が膠着しやすいとすると、より本質を見抜くために大人がまずすべきことは、自分が子どもより賢いという自覚を捨てることだろう。その上で子どもの発言に対して、どうしてそのような発言に至ったのかに思考を巡らせ、対話すべきである。
子どもが何かの事象に対して感想や意見を述べた時、すぐに「それは違う」と否定せず、「そういう考え方もあるけど、こういう考え方もない?」と提案し、複数の思考回路を見せてあげるべきだろう。ひとつの事象に対して様々な考え方があることを示すことで、子どもが従来持っている本質的なモノを見出す直観力に、さらに大人ならではの合理的思考回路が加えられ、想像力を持ちつつ論理的な考えが出来る子どもになるかもしれない。
連載:0歳からの「お金の話」
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