美術館が「治療」の場に、北米で広がる社会的処方の取り組み

カナダ・オンタリオ州にあるロイヤル・オンタリオ博物館(Andrew Francis Wallace/Toronto Star via Getty Images)


「オピオイド(麻薬系鎮痛剤)危機」が拡大するなか、美術館や博物館の中にはオピオイド依存症の患者向けのアートセラピーを行っているものもある。

米ニューハンプシャー州にあるクーリエ美術館は、薬物依存症の患者の家族を対象としたプログラム「アート・オブ・ホープ」を提供している。このプログラムでは、クロードジョセフ・ヴェルネの「The Storm」をはじめとした作品についての会話を通じて、セラピーを行う。

オンラインマガジンのハイパーアラージック(Hyperallergic)はこのプログラムについて、次のように書いた記事を掲載している。

「指導員たちは、薬物依存症が本質的に荒々しいものであることや、依存症が患者の家族など周囲の人たちに巻き添え被害を及ぼすものであることについて説明できるような作品を選択している」

「・・・ヴェルネの作品には、荒れた海や難破船、混乱の中で生存者が愛する人たちを陸に引き上げる様子、遠景には薄暗い山の上の要塞が描かれている」

インディアナ州では、インディアナ大学にあるエスケナージ・ミュージアム・オブ・アートが今秋から、ネグレクトや虐待の被害に遭った子供たちのためプログラムを開始する。

美術館が社会的な空間であることを大きく超え、医学の分野にまで広がってきたと思う人もいるかもしれない。だが、それでもこうしたプログラムは、伝統的な治療方法に代わるのではなく、それらを補完するためものだ。

エスケナージ・ミュージアム・オブ・アートの館長は、インディアナ大学の学生が発行する新聞「インディアナ・デイリー・スチューデント」に対し、「美術館は病院ではない。病院を装うこともない」と述べている。「ただし、美術館には安全な空間がある」という。

編集=木内涼子

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