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2019.01.13 11:30

空港も港もない地方都市に「観光客100万人」を集めた岐阜県の戦略

Kangsadarn.S / Shutterstock.com

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私は2009年に岐阜県の観光局長を拝命した。それ以前の県のインバウンド宿泊統計数は約15万人、いまは約100万人前後の数値となっている。
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空港も港もない日本の地方都市に、これほどの観光客が訪れるようになったのには、渡航ビザの緩和など国の施策の後押しや、県内の観光事業者、世界遺産の白川郷を有する白川村や高山などの各市町村の努力もあったが、いちばんの理由は、県として戦略的なターゲットとプロモーションを見極め、実施したことが大きいと考えている。

その戦略の大きな特徴は、「観光」と「食」と「モノづくり」のプロモーションを一緒に行うという、当時「三位一体」と呼んでいた手法を取り入れたことだ。

それは言葉の通り、観光プロモーションの際に、例えば飛驒牛や富有柿などの「食」と、それらに関連する美濃和紙やテーブルウェアとしての美濃焼、関の刃物などの「モノづくり」を一緒に伝えること。それにより、岐阜ならではの「物語」と「景色(SCENE)」ができ、各国の人々とface to faceでの関係性を保ちながら、継続的にアピールできるというものだ。
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縦割り行政プロモーションの限界

私がこの手法で各国に対してこのプロモーションを始めたのは約10年前。当時、観光、食、モノを一体的に売り込んでいますと言うと、現地で働く日本人(とくに政府関係者)からは驚かれ、現地のおしゃれなインテリアショップでその計画を伝えると、「ここで本気で観光PRをするのですか?」とも言われたりした。

この感覚は、いかにも日本的なものだと思った。そして、民間人と行政マンの意識のギャップをつくづく感じた。まだ多くの人が「インバウンドって何?」と言っている頃で、地方自治体が単独で、しかも海外で本気のプロモーションをするということ自体が珍しかった。

一方、2003年、政府が観光立国を目指すという指針を出して以来、例えば和食なら農水省、日本酒や日本のモノづくりは経済産業省、観光は出来たばかりの観光庁が、ということで、各省が別々に各種プロモーションを大手広告代理店に依頼して行うという、縦割り行政の見本市の様相を呈していた。

そんな有様なので、事前調査などで海外の国に赴くと、現地のメディアや観光関係者の人たちからは、「最近、日本の派手なイベントが沢山行われて、毎日のように招待があり、ダブルやトリプルブッキングになるときもあるのだけど、どうして一度に行わないのか? 日本としては何を一番伝えたいのか?」とよく訊ねられたりもした。
 
現地の人から見れば、食を通じてその国に関心を持ったとしたら、「どこに食べに行けばよいのか?」を知りたくなるし、日本のものづくりに関心がある人は、「職人にはどこで会えるの?」「どこで買えるの?」ということになる。お酒だってしかり。

結果として、すべて観光インバウンドにつながるし、それが次には「じゃあ、気に入ったから購入(輸入)しよう」という食やモノのアウトバウンド(私は、観光で外国人が日本滞在中に食やプロダクトに出会ったことを契機に、それらが海外に輸出されるようになることをインバウンドに対するアウトバウンドと定義している)にもなる。
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文=古田 菜穂子

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