「世界一美しいクーペ」と評されたクルマの系譜を辿るー BMW 8シリーズ

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高級車におけるモダンなデザインとは? そのスタイリングが示すものは?電動化時代の新たな潮流を視野にいれながらも、変わらない洗練で魅せる。

BMW:スポーティネスとともに美しいスタイリングを纏う



「世界一美しいクーペ」──そう評されたクルマがあるのをご存じだろうか?1976年にデビューしたBMW「M635CSi」は、単に美しいフォルムを持つだけではなく、当時、BMWのフラッグシップであった「6シリーズ」の最強モデルであり、レースシーンでも数々の戦績を残した。

一方で、「8シリーズ」はBMWにとって悲願のラグジュアリー・クーペといえる。「6シリーズ」の後を継ぐ形で89年に登場した初代「8シリーズ」は、約10年間のモデルライフの間にわずか3万台が生産されたに過ぎない。だからこそ、2003年に事実上の「8シリーズ」の後継だが、「6シリーズ」の名で再出発させたのだろう。
 
しかし再び、「8シリーズ」の名でフラッグシップ・クーペが復活した。「8」の名をあえて採用した背景には、スーパー・スポーツカーに匹敵するハイパフォーマンス・モデルとして開発されたが、日の目を見ずに終わった「M8プロトタイプ」への思い入れがあるに違いない。
 
なによりも、優先されたのは「スポーティネス」であり、それを体現したスタイリングだ。最大の特徴は、BMWの顔ともいえるキドニーグリルの形状である。伝統的なキドニーグリルとは違って、新型「8シリーズ」ではグリルの最も広がる位置が中央より下になることで、ワイド&ローなプロポーションが強調されている。ボディサイドに目を向けると、面のねじれによってリアフェンダーの上に光を集め、後輪の存在感を強調することで「8」の名にふさわしいスポーティネスを表現している。
 
正直なところ、BMWというブランドは好き嫌いが分かれる。その旗艦モデルともなれば、なおさら強烈な個性を放つものだろう。翻れば、スポーティネスとともに、世界一美しいクーペと評されるにふさわしいスタイリングを纏う。それこそが、BMWのフラッグシップ・クーペたる「8シリーズ」のあるべき姿に違いない。


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#1|なぜ高級車のボンネットは長いのか クルマのデザインを考える 
#2|世界一美しいクーペ──BMW フラッグシップクーペ 8シリーズ
#3|流麗なフォルムを実現した、航空宇宙産業に由来する技術とは ベントレー コンチネンタルGT
#4|「音速の貴公子」 彼の名を冠した、史上最高スペックのマクラーレン アルティメットシリーズ

文=川端由美

この記事は 「Forbes JAPAN 世界を変えるデザイナー39」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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