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(左から)耕田孝英、稲葉太郎、大日向耕作

うつ病や不安障害といった精神疾患の治療を根底から変えてしまう可能性を秘めている──。

現在、手がけている創薬のポテンシャルをこう評価するのは、Digestome代表取締役の耕田孝英だ。バイオテクノロジースタートアップである同社は、創薬特化型ベンチャーキャピタルであるレミジェス・ベンチャーズ・マネージングパートナーの稲葉太郎が、京都大学大学院准教授の大日向耕作をアドバイザーとして、経営コンサルティングを手がける耕田と手を組み、2017年6月に立ち上げた。

なぜ、根底から変えられるのか。それは彼らが着目した「コロンブスの卵」といえる手法にある。これまで製薬業界が注目してこなかった「食品と腸が本来持っている働き」を創薬に利用するのだ。

従来の精神疾患向けの経口治療薬は服用後、消化管を通じ成分が血中に吸収され、脳まで流れて刺激を与える仕組み。医学的に効用と安全性が認められていても、化学物質で強制的に刺激を与えるため体への負担は避けられない。時に重篤な副作用が現れることがあり、患者が長期の服用を敬遠する一因となっている。

一方、同社では、人が食品タンパク質を摂取する際、消化酵素による分解で生成されるペプチドというアミノ酸分子の結合体に注目。食品生理機能学を専門とする大日向は、近年の研究で、このペプチドが神経に直接作用し、体を調節する機能を発揮していることを突き止めた。

「ペプチドが腸管内にある受容体を刺激し、血液を介さずに、迷走神経に直接伝わり、精神を健康に保つ効果がある可能性がわかってきたのです」(大日向)

天然の食物由来で経口摂取可能なペプチドを用いて、人間にもともと備わる仕組みの迷走神経に作用する創薬に成功すれば、副作用の心配が低く、誰もが安心・安全に服用できる薬を実現できる。神経変性疾患や精神疾患と消化酵素の関係に着目していた稲葉は、大日向とその研究成果に出会った時に「これだ!」と感じた。日本だけでも約400万人にのぼる精神疾患の患者が救われるからだ。

Digestomeは今後、レミジェス・ベンチャーズの抱える開発チームの力を借りながら開発を進め、20年までに人での臨床、25年までの商品化を目指す。

文=眞鍋 武 写真=小田駿一

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