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2019.01.09

編集者とコンテンツの囲い込みが加速。「文脈型広告」全盛へ メディアの #2019を読む 

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メディアビジネスにおいて見逃せないのが、ブランドスタジオ設立の動きだ。米紙ニューヨーク・タイムズのTブランドスタジオに始まり、国内でも近年、新聞社や出版社が連携して、あるいは単独で広告企画制作部門であるブランドスタジオを立ち上げてきた。

メディア独自の企画制作力を生かし、文脈やトンマナに則った企画広告や記事広告は比較的読者に受け入れられやすい。消費者の認知から購買に至る間の「理解」を促進するのに適した広告商品で、複数のメディアから「比較的好調」と聞く。既にこの分野が経営の柱となっているメディアもある。

Forbes JAPANでもブランドジャーナリズムに則った文脈型広告「BrandVoice(ブランドボイス)」を提供しており、まさに今、ニーズの高まりを感じている。メディア側からすれば、広告の企画制作を社内で担うことで、配信+αのバリューを出すことができる。2019年もこの傾向は続くだろう。

3. 「神の目線」から「私の目線」へ

ここ数年、ニュースやコンテンツの定義が拡張している。かつては「〇〇が資金調達」、「〇〇容疑者逮捕へ」といったファクトやその周辺情報について、メディア同士、いかに早く、正確に出せるかを競っていた。

しかしSNSや新たなプラットフォーマーにより、そのニュースを「どう見るか」「どう考えるか」「そこから何を学ぶか」といった解釈やコメントがコンテンツ化され、より価値を持つようになった。

事実自体には著作権がない。現状では当局発表や信頼に足るメディアが報道した事実を、各メディアや個人がどのように解釈するかがより重要な読み物となり、それをうまく活用したプレーヤーがビジネス面でも成長している。実は取材を重ねてファクトを掴み、それをファクトとして証明する仕事にこそ最もコストがかかるのだが……。

その個々人のコメントの内容についても、この数年で若干の変容を感じている。自分自身のフィルターを通し、「私の目線」という立場での言及が増えているのではないか。ウェブやSNSでの発信に長けた20〜40代を中心に、自分ごととして物事を捉え、自分なりに解釈する機運があるように感じている。



「私は企業広報を担当する立場として…」「私がこの人と同じ年齢の頃は…」「もし私が同じ立場だったら…」といった具合で、物事を客観的・俯瞰的に論じる「神の目線」からの言及に比べ、より優しさを感じるのは私だけだろうか。

もう一点、特筆すべきは、強いメッセージを持ったコンテンツが目立っている点だ。「#MeToo」がその最たる例と言えるだろう。

ニュースやコンテンツを消費するだけではなく、読者は考える材料やアウトプットのための元ネタを求めている。より自分ごととして、前向きに取り組むべき問題として捉えられる契機となるコンテンツは、まだまだ盛り上がりをみせるのではないか。

これまでウェブを中心に盛り上がってきた「働き方」や「ジェンダー」などのテーマに加え、アイデンティティのあり方、お金や価値の捉え方、消費のあり方、これからの教育、医療や介護……。2019年にはより様々な分野で、本質的にポジティブな議論が起こるような気がしている。

ここ数年、動画プラットフォームやメディアが存在感を増してきた。一方、多くの情報量を短時間で摂取できるのはやはりテキストだという説もある。「ながら聴き」ができる音声にも可能性があるかもしれない。2020年を前に、VRなどでより没入感あるコンテンツ体験を追求しているスタートアップもある。「伝え方」には、まだまだイノベーションの余地がありそうだ。

文=林 亜季

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